仮想現実
初めての給料をもらった僕は、初めての経験をすべく足を速めていた。
僕は色白で身長も低く気も弱いので、女性と交際した経験もなかったのだ。
したがって、22歳になった今も童貞という有様だった。
そんな僕が目指しているのは最近流行り出した店だ。
バーチャルリアリティを利用して、いろいろな経験を疑似体験させてくれるということだ。
擬似的に女性体験を重ねて、いよいよ本番というときに戸惑わないようにしたかったのだ。
バーチャルリアリティ ──── 205X年になった今、イメージの中でだが、いろいろな体験ができるようになった。
この技術を商売に使ったのは、過去の先進技術同様、アダルト業界だった。
そこではいかなるプレイボーイにもなることができた。
高校生に戻って先生とエッチすることだって、社長になって秘書とエッチすることだって可能だった。
ただし、現実世界ではなく、イメージの中でだが。
写真を持っていけば相手をその写真の人物にすることも、自分がその人物になることも可能だった。
アダルト業界でいろいろと試された技術は、やがてアダルトでないところにも応用されていった。
たとえば、スポーツ選手のイメージトレーニングに役立てられたり、精神的な病気のリハビリに使われたりするようになりつつあった。
僕は雑居ビルのエレベータに乗って、3階に上がった。
『バーチャルランド』という看板を確認して店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
スピーカーから女性の声がした。
人の姿はなかった。
戸惑っているとスピーカーの女性の声がした。
「お客様、こちらは初めてですか?」
「は…はい」
「それではお客様、3番の部屋が空いてますので、3番の部屋にお入りください」
僕は言われたままに3番の部屋に入った。
部屋の中は薄暗く、ベッドと壁にモニターが付いているだけのシンプルな部屋だった。
「それではお客様、ベッドにあるヘッドギアをつけてください」
僕はヘッドギアを被った。
「ありがとうございます。それではお客様、この中からお客様の好きなシチュエーションを選んでください」
ヘッドギアをつけると耳もとで話されているように聞こえる。
壁にかけられたモニターに6つの選択肢が映し出された。
(1) ラブホテルで (2) 会社で (3) 病院で (4) 学校で (5) 彼女の部屋で (6) 公園で (0) 次のページへ |
僕は(5)のところをタッチして選んだ。
「次にお二人のご関係を選んでください」
(1) 恋人 (2) 友達 (3) 友達の女兄弟 (4) 姉か妹 (5) 母親 (6) 見ず知らず (0) 次のページへ |
僕は(1)を選んだ。
「それでは次にお相手の女性のタイプを選んでください。もしお写真がございましたら、モニターの下に表を上にして挿入してください」
僕は"お嬢様タイプの大人しい女性"を選んだ。
その後も「あなたの名前は?」「彼女の名前は?」などいくつかの質問に答えた。
「全ての質問が終了しました。それではベッドに横たわって目を閉じてください。まもなくバーチャルリアリティの世界へご案内いたします」
僕はベッドに横になり、目を閉じた。
静かな音楽が小さな音で流れている。
僕は徐々に眠りの中に入っていった。
気がついたときは、正確には"仮想現実の世界で"ということだが、僕は見知らぬ女の子の部屋にいた。
目の前には色が白い可愛い女の子が僕を見つめて微笑んでいた。
目が大きく、鼻が小さく、唇が柔らかそうなとっても可愛い女の子だった。
髪の毛が長く、ゆるくカールがかかっており、それが上品さを醸し出していた。
白いブラウスにうっすら写るブラジャーが魅力的だった。
淡いブルーで小さな花が描かれているスカートは膝より少し長めで、そこから細い綺麗な脚が出ていた。
「川口くん、今日は詩織のこと、いっぱい愛してね」
詩織は両手を僕の首に回し、目を閉じてキスを求めてきた。
(おいおい、いきなりかよ)
僕は詩織とキスした。ほとんど唇が重なるだけだった。
「川口くん、もう少し濃厚なキスしよっ♪」
詩織は唇を押し付けてきて、僕の口の中に舌を入れてきた。
僕はどうしていいか分からず詩織の舌を黙って受け入れていた。
「ん、川口くんったら。もっと川口くんからも積極的に舌を入れていいんだよ。それからキスだけじゃなくって胸とかも触って、ね」
僕は詩織と唇を重ねながら彼女の胸に手をやった。
「ねえ、川口くんってこういうこと初めて?」
「は、はい」
「やっぱり。キスはもちろんだけど、胸の触り方もすごくぎこちなかったし、もしかしてそうなのかなって思って。それじゃいろいろ教えてあげるね。まず私の服を脱がせて」
僕は黙って詩織の服を脱がせた。
「はい、それじゃ、ブラジャーを取って。後ろに手を回して、フォックの部分を真ん中に寄せるようにすれば取れるから」
僕はフォックのところを真ん中に摘まむようにした。
「いっ、痛い…。つねらないでよ」
「ごめんなさい」
「不器用ね。もうちょっと気をつけてやってみて」
僕はフォックを取るよう努力した。なかなかうまくいかなかった。
「川口くんって不器用ね」
詩織は自分でブラジャーを取った。
「じゃあ今度は胸を揉んで」
「は、はい」
僕は詩織の胸を揉んだ。
「痛い!」
「ご…、ごめん」
「もっと優しく壊れやすい物を扱うつもりで触って」
「こう?」
僕は恐るおそる詩織の胸を触れるように揉んだ。
「そうよ。うまいじゃない。その調子で乳首も触って」
僕は触れるか触れないかギリギリのところで乳首を触った。
「あん、感じる…。川口くん、横になっていい?」
詩織はベッドに横たわった。そのときにスカートもショーツも脱いで全裸になった。
「じゃあ川口くん、詩織のこと、好きにして」
僕は詩織に覆い被さった。
キスをしながら胸を触った。
ほとんど詩織の反応がなかった。
「川口くん、あなた、私のこと、ちゃんと考えてる?感じてるか感じてないかじゃなくって、セックスのときだけでも私のことを愛してるって考えて。女の子は気持ちの入ってないセックスには敏感なんだから、そんな態度だったらすぐ振られちゃうよ」
「ごめんなさい。"これで感じるのかな"ってばかり考えて、詩織さんのこと、あんまり考えてませんでした」
「そうでしょ。もうテクニックなんてどうでもいいから私を愛してみて」
僕は詩織のことを考えて愛撫をした。
詩織は時々感じているような声を出していた。
僕は少しだけ自信をつけた。
「それじゃクリトリスに触ってみて。強く触ると痛いから優しく、ネ」
僕は詩織の割れ目に指を入れた。
ゆっくり移動させると小さな突起物にあたった。
「ん…」
詩織が声を出した。
詩織の股間が少し濡れていたので、その液体を指につけて、クリトリスを触った。
「あんっ…」
詩織の声が一段上がった気がした。
僕は優しく優しく詩織の股間の愛撫を続けた。
「ん……川口くん、入れて…」
詩織は僕のペニスを手に取り、自分の膣口にあてた。
「詩織さん、行きますよ」
僕はペニスに手を添えてゆっくりと詩織の身体に挿入した。
「川口くんのペニスが私の中に入ったよ。川口くんの童貞、私がもらったんだね」
「詩織さんの中ってすっごく暖かくって気持ちいいです」
詩織の中は暖かく、時々キュッと締める感じがすごくよかった。
「そう、よかった。じゃ、ゆっくり動いて」
僕はゆっくりと動いた。
すぐに爆発しそうになった。
「詩織さん、もう出そうです」
「駄目。まだ私、全然感じてないもん。何か他のこと考えて頑張ってみて」
「もう駄目です。ごめんなさい」
僕は2往復しただけで詩織の中に出してしまった。
「ごめんなさい」
「いいわよ、初めてなんだもんね。すぐに元気になるわよね?」
詩織は僕を仰向けに寝かせ、僕のペニスに両手を添えるように握った。それだけでも僕のペニスは元気になった。
「さすが若いわね。でもせっかくだからちょっとサービスしてあげるね」
詩織はペニスの先にキスをしてくれた。
それだけでいきそうになった。
「直接は刺激が強いし、避妊のためにもコンドームはつけないとね」
詩織は僕のペニスにコンドームをつけてくれた。
詩織は僕のペニスを跨ぐように膝で立った。
そして僕のペニスに手を添えて、詩織の膣口にあてゆっくりと腰を下ろしてきた。
僕のペニスが詩織に包まれた。
「川口くん、今度は私が動くからできるだけ我慢してね」
詩織は身体を上下に動かした。
「ぅんぅんぅんぅんぅんぅんぅんぅんぅん……」
詩織は声を押し殺しているようだった。
今度はコンドームをつけているせいかすぐに爆発することはなかった。
「ぅんぅんぅん……川口くん、そろそろ行きそう…」
「詩織さん、僕も出そうです」
詩織は動く速度を速めた。
「あ…あ…あぁぁぁ………」
詩織が身体を仰け反らせて声を上げて、ほんの一瞬静止したかと思うと、僕の方に身体を倒した。
僕もほとんど同時にコンドームの中に放出した。
僕は詩織を腕の中に抱き、ゆっくりと眠りに落ちていった。
全てが終わって目を覚ましたとき、僕はパンツの中で精液を爆発させていた。
パンツの中に違和感を感じながら上半身を起こした。
「お客様、お疲れ様でした。現在、モニターキャンペーン中で、新しいシチュエーションをお試しいただき、体験後に簡単なアンケートにご協力いただければ、モニタープログラムを無料にさせていただくのはもちろんのこと、先ほどのプログラムも半額にさせていただきますが、ご協力いただけますでしょうか?」
「えっ、もう一度体験できて、半額になるのですか?」
「はい、ただし開発中ですので、いろいろなシチュエーションをお選びいただくことはできませんので、その点はご容赦ください」
「はい、結構です。モニタープログラム、します」
「それではもう一度横になっていただけますか?すぐに始めさせていただきます」
気がついたときは僕は全裸で乳房を揉まれていた。
(えぇっ、何で?どうなってるの?)
僕は状況が把握できなかった。
男は執拗に乳房を揉んでいた。
「どう、感じる?」
僕は何が何だか分からず、どう反応していいのか分からなかった。
「うーん、乳房は感じないのかな?」
男は摘まむように乳首に触れた。
「あんっ」
僕は身体に電気が流れるように感じた。
「そうか、乳首が感じるんだね」
男は乳首を指で摘まみながら、舌でつつくように舐めた。
「あんっ………」
次々に襲ってくる快感のために、考えることが難しかった。
それでも、このプログラムでは自分は女性なんだということだけはようやく認識できた。
乳首への攻撃が続いて、初めて経験する強い快感が続くのでおかしくなりそうだった。
「やめて」
「ご、ごめん」
男はゆっくりと僕の顔に顔を近づけた。
何とそれは僕の顔だった。
驚いて男の顔を凝視した。
「どうしたの、詩織?」
男は僕のことを"詩織"と呼んだ。
さっきのプログラムで立場を入れ替えたみたいだ。
何となく状況が分かってきて僕は落ち着きを取り戻した。
「ねえ、川口くん、キスして」
僕は自分が主導権を取るべく、こう言った。
女性の話し方は特に意識しなくともできた。
おそらくこの世界ではこういう話し方をするようにプログラムされているのだろうと思った。
男はゆっくりと顔を近づけてきた。
自分とキスするというのは不思議な気分だった。
しかし、男は僕と違って経験豊富なようだった。
キスだけで感じてしまったのだ。
これでは主導権を取れそうもない。
僕は主導権を取るのは諦めた。
「詩織はキスが好きだな」
男は耳元でそう呟くと、そのまま耳を舐めてきた。
これも気持ちよかった。
やがて首筋、肩、鎖骨を舐められたが、どこも気持ちよかった。
その間もゆっくりと乳房を愛撫されていた。
「詩織、気持ちいいか?」
僕は男に微笑みながら言った。
「…うん、…気持ちいいわ…」
さっきのプログラムで『女の子は気持ちの入ってないセックスには敏感』って言われたけど、そんな余裕なんてない。
どこも本当に気持ちいい。
「どれどれ」
「あんっ」
男は僕の股間に手を伸ばし、僕の股間に触れた。
「ホントだ、ほら、もうこんなになってる」
男は指についた僕の愛液を見せた。
「いやっ、恥ずかしい」
僕は女の恥じらいを見せて、顔を手で覆った。
「可愛いな、詩織は」
男は乳房から舌を舐めてきた。
お腹、臍、脇腹、臍の下まで来たとき、手で僕の股を広げた。
「詩織のオマンコ、綺麗だよ」
「いやっ、見ないで」
「何を言ってるんだ、こんなに綺麗なのに」
「だって恥ずかしい」
僕は演技でなく本当に恥ずかしさを感じていた。
「詩織のここはどんな味がするのかな?」
男はそう言って、僕の女性自身を舐めた。
「あんっ…、いやっ…、だめっ…、やめて…」
僕の意識は快感の波に押し流されそうになっていた。
男はわざとペチャペチャと音を立てているようだった。
淫らな音は僕の恥ずかしさを何倍にも増長した。
相当長い間クンニされていたと思う。
急に男がやめた。
おそらくこのとき僕はもっとやって欲しくて物欲しそうな顔をしていたはずだ。
「詩織、今度は俺のを銜えてくれないか」
男は僕の横に仰向けに寝た。
僕は気だるい身体を起こし、雄々しくいきり立った男のペニスに銜えるべく、ペニスに顔を近づけようとした。
不思議と嫌悪感はしなかった。
しかし、顔の両側から長い髪が落ちてきて視界を遮った。
僕は髪の毛を左にまとめ、左側からだけ髪の毛が落ちてくるようにした。
僕は耳の辺りで自分の髪を左手で持ち、右手で男のペニスを握った。
ペニスに顔を近づけると生臭い匂いがした。
その匂いを我慢して、先をペロッと舐めてみた。
ペニスがビクンと動いた。
竿の部分を舐めた。
袋も舐めた。
その度に微妙に反応するペニスが面白かった。
「詩織、そろそろ銜えてくれないか」
「ぅんっ」
僕は口を開けてペニスを全部銜えた。
そしてゆっくりと口をすぼめながら先の方に動かすようにした。
この動きを繰り返すと、男から呻き声が聞こえた。
「詩織、うまいじゃないか」
僕はゆっくりとこの往復運動を繰り返した。
だんだんだんだん顎がだるくなってきた。
男の手が僕の頭を持って往復運動を速めていった。
僕は吐きそうになりながらも、フェラチオを続けた。
やがて男のペニスが止まったかと思うと、口の中に勢い良く精液を放出した。
僕はそれを残さず飲みこんだ。
何となくそうした方が良いような気がしたのだ。
「詩織、全部飲んでくれたのか。ありがとう。それじゃご褒美に僕の愛をいっぱいあげよう」
今射精したばかりだというのにペニスはもう大きくなっていた。
ペニスの先を僕の女性自身のところにつけた。
「詩織、行くよ」
男のペニスがゆっくりと僕の身体の中に入ってくるのを感じた。
動きが止まったのを感じた。
「川口くん、全部入ったの?」
「うん、全部入った。動くよ」
「ちょっと待って。もう少し川口くんの、感じていていい?」
僕は川口のペニスの被挿入感を感じていた。
「うん…ん!」
「どうしたの?」
「詩織のあそこが僕のを締め付けたんだ。『早くちょうだい』って言ってるんだろうね」
「そんな…川口くんの意地悪……」
「じゃあ動くよ」
男はゆっくりとピストン運動を始めた。
僕は身体全てが性器になったように感じた。
とにかく気持ちがいいのだ。
「あんあんあんあんあんあんあんあん……」
僕は大きな声を出して喘いでいた。
「あんあんあんあんあんあんあんあん……」
「詩織、行くぞ…」
「あんあんあんあん、川口くん…、きて……」
僕は男のペニスが僕の中でビクンビクンと動いたのが分かった。
次の瞬間、男のペニスから精液が大量に噴出された。
僕は体内に放出された精液を感じた。
僕と川口は同時に達したのだ。
最初のプログラムでは男は出したらそれで終わりだったが、女はなかなか快感が引かない。
男が身体を離そうとした。
「川口くん、もうちょっと、このままでいて」
「うん、いいよ。詩織、良かったか?」
「うん、とっても良かった。川口くんは?」
「もちろん。詩織のオマンコは最高だな」
「そんなんじゃなくって、詩織のこと、愛してる?」
「もちろん、詩織のことは大好きだよ」
「嬉しい」
僕は女性の幸せを感じていた。
徐々に意識が薄れていった。
現実世界に戻ってきたとき、僕はパンツの中は精液で気持ち悪いくらいになっていた。
パンツの中の気持ち悪さを我慢しながら上半身を起こした。
「お客様、いくつかご質問させていただいてよろしいでしょうか?」
「…はい、……いいですよ」
僕はまだ頭がボォーッとしていたが、何とか意識を保とうと努力していた。
「では、今のプログラムの率直な感想をお聞かせください」
目の前のモニターに選択肢が映し出された。
僕はほとんど無意識に率直に"大変良い"を選んでしまった。
「それでは、今体験していただいたような男女が入れ替わったようなサービスが始まったら、お客様はご利用なさいますか?」
今度は僕の羞恥心がちょっと顔を出して"時々利用したい"を選んだ。
本当は"毎回利用したい"と答えるべき心境だった。
「それでは最後です。何か改善点があれば教えてください」
「実は僕がどんな顔になって、どんな姿だったのか、あんまり分からなかったので、それが分かればよかったと思います」
最後まで快感から完全に抜け出せず、ほとんど素直に答えてしまった。
「ありがとうございます。それでは出口でお会計をお願いします」
僕は会計を済ませ、その店を後にした。
その経験を境にして、僕の意識に変化が生じた。
女性が性の対象ではなくなったのだ。
それまではお尻を見たり、胸を見たりして、普通にエッチなことを考えていたのだが、同性を見るような感覚に変わっていた。
『あの色のワンピースにはああいう色のジャケットも合うんだ』とか『あの髪の色にあの色のスーツは合わないよね』とか考えるのだ。
逆に男性に対して、性的な興奮を覚えることすらあった。
自分の身体に対してさえ違和感を感じるようになった。
翌月の給料日に再度『バーチャルランド』に行った。
自分が正常であることを確認するため、自分が上司の立場で部下のOLとの情事を選んだ。
これで興奮することができれば自分が異常でないと確認できると思ったのだ。
しかし、結果は自分の性の嗜好がある意味予想通り普通でないことを認識することになった。
情事の最中も全然集中できず、目の前でよがり声をあげているOLが羨ましいと感じただけだった。
自分の快感なんてものは全くと言っていいくらいに感じなかった。
バーチャルリアリティの中で行けないなんて初めてだと相手のOLに言われた。
現実の世界に戻ってきたときに僕は思い切って聞いてみた。
「あのぅ、一ヶ月前にモニターでやったプログラムって、まだ始めてないんですか?」
「男と女が入れ替わるやつですか?申し訳ございませんが、あれはあんまり評判がよくなかったので、本格的なサービスに入れなかったんですよ」
「そうですか」
僕がすごく残念そうな顔をしていたのだろう。
思いもかけない提案が聞けた。
「お客様、あまりバリエーションはございませんが、3つほどプログラムは実行可能ですから、サービスでやらさせていただきましょうか?」
「は、はい!是非お願いします!」
「それでは、先ほどお客様の選ばれたプログラムの逆パターンでよろしいですか?」
「はい、それでお願いします!」
僕は思いもよらぬ提案に胸を踊らせた。
すぐにベッドに横になり、スタンバイした。
「それでは始めさせていただきます」
僕の意識は徐々に薄れていった。
僕はバーチャルの世界で徐々に意識がはっきりしてきた。
僕は夜遅くまで一人で残業していた。
周りは人がいなかった。
僕の席の上だけ蛍光灯が点いていた。
PCの前に座り、何かの表を作成していた。
僕はPCのモニターを黒くして自分の顔を映してみた。
モニターではあまり詳しくは分からなかったが、目が大きく、鼻が小さく、唇が柔らかそうに見えた。
とにかくとっても可愛い女の子だった。
髪の毛が長く、ゆるくカールがかかっており、それが女性らしさを表していた。
服を見た。
白いブラウスで、首元に大きな白いリボン結びにしたネクタイが目に入った。
スカートは紺色のタイトスカートで膝くらいの長さのようだ。
そこからストッキングに包まれた細い綺麗な脚が出ていた。
僕が自分自身の服装を点検していると、嶋崎課長(僕にはなぜか彼が嶋崎課長だと分かった)が外回りから帰ってきた。
「藤沢くん、遅くまでご苦労様」
「課長こそ遅くまでご苦労様です」
嶋崎は背後から僕に近づき、僕の肩に手をかけ、耳元でこう言った。
「最近なかなか二人っきりになれなかったから久しぶりに良いだろ?」
そして僕の耳たぶにキスをした。
「ぃゃん…」
「ほら、僕のここなんてもう爆発寸前だよ」
嶋崎は僕の手を自分の股間に導いた。
ズボンの中で嶋崎のものが大きくなっているのがよく分かった。
「詩織の口で慰めてくれないかな」
「今触っているファイルをセーブさせてください」
僕は編集中のファイルをセーブすると、嶋崎の前にひざまずいた。
嶋崎のズボンのチャックを下ろし、彼のペニスを取り出した。
おしっこ臭い匂いが鼻をついた。
ペニスの先をペロッと舐めた。
そして僕は彼のペニスを口に入れた。
「ああ、やっぱり詩織の口の中は最高だ」
僕は一生懸命、嶋崎のペニスに刺激を与えた。
「向こうのソファに行こう」
「会社では嫌です」
「そんなこと言っても、こんな状態になったら、どこかに行く余裕なんてないよ。詩織が嫌だと言っても僕はやりたいんだから」
「お願い、嶋崎課長。会社ではお願いだからやめて」
「ゴチャゴチャ言ってないで、来いよ」
嶋崎は僕の手をひっぱって、強引に部屋の隅にある応接コーナーのソファに引き摺って行った。
「さっさとやらせてくれよ。見回りに見つかったら詩織も恥ずかしい思いをするだけだろ?」
「……分かりました」
「じゃあスカートとパンストを脱いでくれよ」
僕は言われるまま、スカートとパンストを脱いで、ショーツ1枚になった。
僕は嶋崎に抱き寄せられた。股間に手が伸びた。
「詩織も好きだな。男のものを銜えただけで、こんなに濡れてるよ」
僕はロングソファの手すりに腰かけ、片方の脚だけショーツを脱いだ。
もう一方の脚の太腿にショーツは丸まって止まっていた。
そのまま上半身をロングソファに倒した。
ソファの手すりに膝を立てると僕のオマンコは嶋崎からよく見えるようになった。
「詩織、すごく厭らしい格好だな。詩織のオマンコが僕のものをほしがってヒクヒクしてるのがよく見えるよ」
嶋崎はかがんで僕の女性自身を舐めた。
「あぁぁ……課長……すごく感じます……」
嶋崎はなかなか舐めるのをやめようとしなかった。
「あぁぁぁぁ……課長……もう…やめて…。早く…入れてくださ…い……」
「何を入れて欲しいんだい?」
「課長の…お…ちん…ちんを……」
「僕の何をどこにいれたらいいのかな?」
「課長の…おち…んちんを……詩織の…オマ…ン…コに…入れて…ください……」
「そんなに言うんなら入れてあげよう」
嶋崎は立ち上がり、僕の足首を自分の腕にのせ、思い切り開脚させるような体勢にし、ペニスを僕の女性自身に挿入してきた。
「あ…ああ……、課長の……おちんちん…今日はとても…深いです……」
「詩織のオマンコが僕のをしっかり銜えこんでる感じだな。動かすよ」
「はい……お願い…します……」
嶋崎はペニスを僕の女性自身に叩きつけるような感じで前後に動かしてきた。
「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ……」
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン……。
「課長……早く……。いっちゃう……」
僕は何度か達して軽く意識を失った。しかし、嶋崎は容赦なく前後運動をやめなかった。
気がつく度にすぐに達しそうになった。
「早く……早くきて……。おかしくなっちゃう………」
僕は本当に気も狂わんばかりの快感に押しつぶされそうになっていた。本当に発狂しそうな気さえした。
「よーし、じゃあ、そろそろフィニッシュにしようか」
嶋崎の動くスピードが速まった。
僕は気が遠くなり、頭の中が真っ白になった。
「うおぉぉぉ」
嶋崎の雄叫びが遠くから聞こえるような気がした。
僕はもう完全にいってしまっていた。
何かを話せる状態でなかった。
徐々に気が遠くなった。
現実世界に戻ってきても、まだ意識が朦朧としていた。
「お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
僕の目が虚ろだったのだろう。
スピーカーの女性から心配そうな声が聞こえてきた。
「あっ、はい、大丈夫です。あの…」
「はい、何でしょうか?」
「このプログラム、是非続けてくださいね。私、もうこれがないと生きていけそうにないもの」
僕は無意識に女言葉で話していた。
「あのぅ、お客様。もし興味がございましたら、近くにこのような店もありますが」
モニターに『女装の店・エカテリーナ』という文字が出ていた。
地図を見るとここからすぐのところにあるらしい。
女装したいわけじゃなく、バーチャルで女の子になりたいだけなのに…。
そう思ったが、その店に行きたいという欲求にとらわれていた。
すでにそのとき自分が男であると考えることに違和感を覚えていたのだ。
「こういうお店があるのね、嬉しい。早速、帰りに寄ってみることにするわ」
僕は『バーチャルランド』を出ると、その足で『エカテリーナ』を目指した。
頭では真面目に性転換することを考えていた。
こちらは『バーチャルランド』のスタッフの会話。
「これであのモニタープログラムをお願いした客全員が再度の経験を求めてきたな」
「はい、今の客が1ヶ月ぶりで最も間隔が開いたんですが、早い客だと次の日には来ましたから。今の客のように女装の店を紹介するとほとんど全員喜々として女装の店に行ったみたいですよ。何人かは実生活でも女性の格好をしているらしいです」
「何かあのプログラムに"女になりたい"みたいなサブリミナル効果みたいなものを入れていたのか?」
「いえ、開発グループでも不思議に思って調べたらしいですが、特にそのような暗示効果のある仕組みは入れ込んでいないようです」
「だとしたらどうして?」
「仮説としては、擬似的とは言え、女性の快感を男の脳では受容しきれず、何らかの自己防衛のために、女脳に変化したのではないかという者もおります」
「なるほど、それは一理あるかもしれんな。男が女性の快感を経験したら死んでしまうみたいな俗説も聞いたことがあるしな。あんなものは根も葉もない説だと思っていたが、こうなると信じざるをえないな」
「男女が入れ替わるというアイデア自体は面白いと思うので、もう少し快感を抑えるよう改善して再度挑戦してみたいと開発も申しておりました」
「そのときのファーストモニターは君がなるか?」
「いえいえ、私は普通に男のままでいたいと思いますので、遠慮させていただきます」
二人の男はにんまり笑い合った。
《完》