同僚と上司と



「おい、弘斗。何かやばい噂聞いたんだけど…」
由貴("よしたか"と読む)は神妙な顔をして話し出した。
福山弘斗と南野由貴は半年前に健康食品販売会社に入社した同期だ。
そもそも同期入社したのは7人だったのだが、その中でも二人は何となくウマがあった。
ベタベタと二人でくっついているようなことはなかったが、気がつけば二人でいることが多かった。
「何だよ、やばい噂って」
弘斗は特に興味を示したわけではないが、形だけの返事を返した。
「一緒に入社した大川って奴がいただろ?」
「ああ、研修3ヶ月でリタイアした奴だな」
確かそんな奴がいたなという程度の記憶しかない。
やけにおとなしくて、いるのかいないのか分からない奴だった。

「その大川の家族から息子が帰ってこないと会社に苦情があったらしいんだ」
「そりゃこの就職氷河時代にせっかく会社に入ったってのに3ヶ月でクビになったら普通の神経してたら実家には帰れんだろうな」
「いや、大川が行方をくらませたんじゃなくて、会社に消されたんじゃないかという噂なんだ」
「ありえないってそんなこと。いくら何でもそんなやばいこと、会社がするわけないだろう。それより最近経理に可愛い子入ったの知ってるか」
弘斗はその女性のことが気になっていた。
由貴からその女性の情報が得られればと思い、話題を変えた。
「ああ、知ってる。ある日急に現れたよな。どうせ役員かなんかのコネで入ったんだろ。いいよな、可愛い女は。その点、男は地道に働いてアピールするしかないもんな。俺も女に生まれりゃ良かったかもな。そうすりゃ今頃玉の輿にのってたかもしれないしさ」
残念ながら由貴はその女性のことを知らないようだ。
「何バカなこと言ってんだよ。そんなこと言ってたら会社から消されるぞ」
「洒落にならんこと言うなよ。マジだったらどうすんだよ」
「だからそんなわけないって言ってるだろ」
どうしてこんな程度の噂を信じるのだろうか。
弘斗は不思議に思った。


「おい、弘斗、そのドリンク、何だよ」
自室で休んでいると由貴が遊びにやってきた。
テーブルに置いてあるドリンク剤に興味を持ったようだ。
「ああこれか。今日うちの家村部長がくれたんだよ。疲れた顔してるから飲めってさ」
「へえ、お前の上司って優しいんだな。うちなんてそんなの全然だよ」
「何か俺に優しくってちょっと不気味なんだけどな」
「贅沢言うな。それにしてもこんな商品うちが扱ってたか?」
そういうことに興味を持つのかと驚いた。
「さあ、俺は見たことないけど」
単なるドリンク剤だろうと思っていた。
「何のドリンク剤なんだ?ラベルもないなんておかしいだろう?もしかしたら試験品かもな。お前で試そうとしてんじゃないか?」
「なるほど。そういう考え方もできるんだな。俺に優しいんじゃなくて、俺をモルモットとして考えてるのか……」
「そんなこと真面目に言うなよ。そういうふうにも考えれるってことだよ。上司の好意は素直に受け取ったほうがいいぞ」
「しかし俺そんなに疲れてないし…」
「お前って部下としての心構えがなってないぞ。上司の好意は素直に受け取れ。お前が飲まないんだったら、俺がもらっていいか。最近疲れ気味だし」
弘斗の返事を待たずに由貴がドリンクを飲み干した。

「おっ、早速効いてきたみたいだ。身体が温かくなってきた」
由貴が上気させた顔をこっちに向けてきた。
「すげえ温かいぜ」
顔色が真っ赤になってきた。
「何か身体が…変…だ……」
由貴が藻掻き出した。
「どうした?救急車を呼ぼうか」
「熱い…助けてくれ……」
弘斗が救急車を呼ぼうと携帯を取り出した。

そして携帯の画面に目をやったそのときだった。
由貴のいる方向から声がした。
「…ぁ…何か楽になってきた。もう大丈夫みたいだ」
女の声だ。
「?」
弘斗は何が起こっているのか理解できなかった。
確かに由貴が話しているはずなのに。
どうして女の声なんだ?
弘斗は声のするほうを見た。

「えっ、あれ?何だ、これ?」
由貴が自分の胸を掴んでいた。
明らかに胸に膨らみがある。
由貴がシャツを捲り上げた。
プルンッ!
胸の膨らみが揺れた。
乳房だ。
由貴の胸に美しい乳房がついていた。
「お…お前……」
弘斗はそれ以上言葉を発することができなかった。
由貴が立ち上がってズボンとパンツを一気に下げたからだ。
自然と由貴の股間に視線が行った。
そこには…男としてのシンボルはなかった。
生まれて初めて見る股間だった。
おそらく異性の股間なんだろう。
「女になってる……」
由貴が呟いた。
やっぱりあれが女の身体なんだな。
弘斗は由貴の身体を見ながらそんなことを考えていた。
「そうか、あれ、女になる薬だったんだ」
由貴の声は落ち着いているように聞こえた。
なぜかあまり取り乱していないようだ。
由貴は全裸のまま鏡の前に立った。
「すげえ、完全に女になってる」
そんなことを言いながら、ポーズを取っていた。
「へへ、俺って女になると美人になるんだ。プロポーションもいいじゃん。これはいい気分転換になりそうだな」
由貴がそんなに落ち着いている理由が弘斗には理解できなかった。
「どうしてそんなに落ち着いてるんだ?」
由貴は思わず理由を聞いた。
「あのドリンクが性転換の薬なら、もう1本飲めば元に戻れるってことじゃないか。そしてそれはお前の上司からもらうことができる。そうだろ?」
『なるほど』と思いながら、一方では『そんなに簡単に考えていいのかな』とも考えていた。

由貴が弘斗のところに歩み寄ってきた。
弘斗は何も言えず突っ立っていた。
ただし股間の物はその存在を主張するかのように大きくなっていた。
「弘斗、俺の裸に興奮してるんだろ?」
由貴は俺の股間に手を置いた。
「せっかくだし女の気持ち良さを経験させてくれよ」
由貴がズボンの上から弘斗のペニスを軽く握った。

「由貴、やめろよ」
弘斗は由貴から顔を背けた。
由貴の身体を見ていると理性が消えてしまいそうだった。
「お前は女に興味ないのか?」
「あ…あるよ……」
「だったらいいじゃないか。女のほうから抱いてくれって言ってるんだから、遠慮することないだろう?」
弘斗のズボンの前部を由貴の手が這い回った。
「女って言ったってお前は由貴だろ?」
「確かにそうだが、身体は女だ」
「身体は女でも中身は由貴だろ?」
「由貴なんて読み方を変えればいい。俺は子供の頃よくユキって呼ばれて虐められていたんだ。お前も俺のことをユキって呼べばいい」
「そんなこと言ったって…」
「お前も頑固だな。しゃあない、女になってやるか」
由貴は何を言ってるんだ?
もう女の身体になっているじゃないか。
今さら女になるなんてどういう意味だ?
そんなことを考えていると甘い声が聞こえてきた。
「弘斗くん、あたしのこと、好き?」
由貴が弘斗の耳元で囁いた。
由貴の息が耳にかかって背筋がゾクゾクッとした。
「抱いて欲しいの」
弘斗は自分の理性が崩れていくのを感じた。
無我夢中で目の前の女体に抱きついた。
「そんなにがっつかなくていいわよ」
由貴はなだめるように弘斗から離れた。
「布団を敷いてくれない?」
弘斗は言われるまま布団を敷いた。
「来て」
催眠術にかかったように由貴に命じられるままだった。
由貴に覆い被さり、弘斗が由貴にキスしようとした。
しかし、由貴から抵抗された。
「キスは…。ごめんね…」
さすがに男同士のキスはできないということなのだろうか。

弘斗は由貴の乳房を掴んだ。
「痛いっ!」
「ご……ごめん」
「もしかして童貞なの?」
「………」
「そうなのね。あたしが弘斗の童貞を奪えるんだ」
由貴がゆっくり上半身を起こした。
「弘斗くんが横になって」
弘斗が横になった。
由貴は弘斗のペニスを両手で包み込むように握った。
「硬くなってる」
由貴の手がペニスの先に刺激を与えた。
気持ち良い。
「ピクピクしてる」
由貴が弘斗の腰の辺りにまたがるように膝で経った。
そして右手でペニスを握り、自分の股間に当てた。
そして腰をゆっくりと前後に動かした。
ペニスの先が由貴の女性器に触れた。
そこは温かくて少し湿りを帯びていた。
何度も何度も由貴の割れ目にこすりつけた。
「あたしのほうもそろそろ準備ができたみたい」
由貴がニコッと笑った。
とても魅力的だ。
男にはとても見えない。
見惚れていると、由貴がゆっくりと腰を落とした。
「…ぁ……ぁぁぁぁぁ…すごい…ぃぃ……」
由貴が歓喜の声をあげた。
由貴の女性器が完全に弘斗のペニスを銜え込んでいった。
由貴の中は温かく気持ち良かった。
「どう?気持ちいい?」
「あ……うん……」
「あたしも気持ちいいわ」
由貴がゆっくり腰を動かした。
「ねえ、胸を触って…」
弘斗はゆっくりと由貴の乳房に手を伸ばした。
「優しくしてね」
弘斗が恐るおそる由貴の乳房に手を重ねた。
「…ぁ……」
由貴の口から甘い吐息が漏れた。
「…ぁぁ……いい……」
由貴が激しく腰を動かし出した。
弘斗にはすぐに耐えられなくなった。
弘斗のペニスが由貴の中で脈打った。
大量の熱い粘液を由貴の中に放った。

「弘斗、お前、ちょっと早すぎるぞ。俺まだいってないし」
由貴は弘斗にまたがったままで、まだペニスでつながっていた。
弘斗は射精したことと由貴の言葉遣いが男に戻ったせいで急激に萎えてきた。
「今度はお前が上になれ」
由貴は弘斗から離れようとした。
「…ぁん……」
弘斗のペニスが抜けたときに由貴は甘い声を出した。
男の言葉に戻った状態で女の反応を示したせいか由貴は顔を赤らめた。
「弘斗、俺を抱け」
顔を赤くしながら、由貴は弘斗に命じた。
「ぇ…ぁ…うん……」
「あ、そうか…」
弘斗の妙な反応に由貴が何かを感じたようだ。
「ごめんね、話し方、ちゃんとしなくちゃね。弘斗、あたしを抱いて、ね」
由貴の口調が女の話し方に戻った。
「来て……」
由貴は仰向けに寝て、弘斗に向かって腕を伸ばしてきた。
弘斗は由貴に促されて覆い被さった。
「胸を舐めて」
弘斗は由貴の乳房に舌を這わせた。
「ああ…いいわぁ……はぁん…」
乳首を舐めると由貴から甘い声が漏れた。
弘斗は由貴の乳首を中心に舐めた。
由貴の感じている姿に興奮が高まった。
弘斗は萎えていたペニスに再び力がみなぎっていくことを感じた。

「弘斗、あたしのあそこ、舐めてくれない?」
弘斗は由貴に言われるまま、由貴の股の間に顔を近づけた。
さっき自分が出したザーメンが出ている。
いくら何でも自分の出したものを舐めたくない。
指で割れ目を開いた。
ピンクの突起物があった。
弘斗はその部分に舌を這わせた。
「…あああんんん……」
由貴が身体を反らせた。
由貴の感じ方は尋常ではなかった。
弘斗は執拗に由貴のその部分を攻めた。
「…もう…もうやめて…。おかしくなるぅ……」
由貴は芝居ではなくそう言っているように弘斗には思えた。
さらにペニスの硬度が増していくような気がした。

弘斗はペニスを由貴の膣口にあてがった。
そして一気に由貴の中に押し込んだ。
「弘斗、早く動いて…」
弘斗は由貴を何度も突いた。
「あ…いい……。もっと…もっと強く…」
由貴は弘斗の腰に脚を絡めて、突き易いような体勢になった。
弘斗は由貴を思い切り突き続けた。
「ああ…いく…いきそう…。来てぇ…」
弘斗は思い切り打ちつけた。
「出…出る……」
そう呟き、弘斗は由貴の中に思い切り出した。
さっき出したばかりとは思えないほど射精した。

「弘斗、良かったわよ」
由貴は息を切らせて微笑んだ。
「それじゃ貴重な体験もできたことだし、そろそろ元に戻りたいな。お前の上司にもう一本薬をくれるように頼んでくれるか」
男の口調に戻った。
あっさりしたもんだな。
弘斗は感じた。
「分かった。家村部長にもうひとつもらえるよう頼んでみる」
弘斗は携帯を取り出し電話をかけた。
「お前、部長なんかの携帯番号知ってるのか」
「ああ、何かあったら電話しろって教えてくれた」
弘斗は家村にドリンクのことを頼んだ。
「家村部長がすぐに来てくれるそうだ」
「すぐに?どうしてそんなに急ぐ必要があるんだ?何ならもう一回やってもいいかなって思ってたのに…」
「そんなことを言ってないで、とにかく服を着ろよ」
「あ…ああ、分かった」
由貴は着ていた服を再び身につけた。
男物の服を着ていても由貴は充分に女だった。
たった今この身体を抱いたのかと思うとまた大きくなってしまった。
「弘斗、お前も好きだな。何ならもう一発やるか?部長が来たら来たでいいじゃないか。部長のせいでこうなったんだからな」
それもそうかと思い、由貴を抱き寄せた。
そのとき、インターホンが鳴った。


「福山くん、もうひとつドリンクが欲しいってどういうことなんだ?」
家村の手にはドリンク剤があった。
持ってきてくれたんだ。
「いや実はですね…」
そう話しながら弘斗は家村を招き入れた。
「営業の南野ってご存知ですか?」
「ああ、君と同期入社のやつだろう」
「その南野がですね…」
弘斗は部屋の奥にいる由貴に目をやった。
「誰だ、彼女は?君のガールフレンドなのか?」
「いや、彼女が南野なんです」
「どうして南野くんが女になってるんだ」
「家村さんからもらったドリンクを飲んだら…」
「えっ、あれを南野くんが飲んだのか」
「はい」
「そうか。私は福山くんに飲んで欲しかったんだが」
「えっ、それはどういう意味…?」
家村の説明をまとめるとこうだ。

女は感情で生きる生き物だ。
それに対し男は理性で生きている。
秘書は理性的でなければいけない。
したがって男が秘書をやるべきだ。
しかし対外的には女のほうがいい。
この会社には外部には販売していない性別を変える薬があった。
この薬は一部の者しか知らない。
会社の経営層の人間のみだ。
それらの者が気に入った男を女に変えて秘書にすることがあるのだそうだ。

「そんな馬鹿なことが…」
「あるんだよ。例えば大川なんか頑張ってるだろ」
「大川?」
「経理部長の秘書をしてるじゃないか」
あの急に現れた可愛い女子社員が大川だったとは…。
そう言われれば大川に似ているような気がしてきた。

「そんなことしてばれないんですか?」
弘斗は家村に聞いた。
「君が女になったら、それを言いふらすか?」
家村は質問で返してきた。
「あ…いえ、もし女になったら、すぐ部長に連絡を取ります。部長にもらったドリンク剤が原因ですから」
「それに対し私は君に2年間秘書をしてくれとお願いする。もし聞いてくれれば、元の男に戻すことを約束し、男に戻ったら係長に昇進することもだ。どうする?」
「僕を男に戻すことを条件にですか?そんなの卑怯です」
「しかしすでに君が女になっているとしたら?」
「渋々言うことを聞くしかないでしょうね」
「もちろん誰にも口外したりしないだろ?」
「……なるほど、ですね。なかなか巧妙ですね」
「ところが君は男性のままで、南野くんが女になってしまった。君は南野くんが女になったことを口外しないという保証はない。対応策を考えないとな」
「対応策?」
「このままだと我が社の秘密が漏れてしまう恐れがある」
「こんなこと誰に言ったって信じてもらえません」
「それにしても君が口外する可能性はある」
「誰にも言いませんってば」
「そうだな。君たちを信用しないとな」
そして背中に何かを当てられた。
ビリッ!
弘斗はそのまま気を失った。
もちろん由貴もだ。



気がついたのは見知らぬ一室だった。
部屋の中を見渡したが、全く知らない部屋だ。
どこだ、ここは?
弘斗は意識のはっきりしない頭で考えた。
「気がついたのか?」
先に気がついていた由貴が声をかけてきた。
「あ…ああ、ここはどこだ?」
「さあ、俺にも分からない。言えるのは俺たちは外には出られないってことだ」
「えっ?」
「ドアには鍵がかかっていて中からは開けられないみたいだ」
「マジで?」
「電話はないし、携帯も取り上げられている」
「外部には連絡できないってこと?」
「そうみたいだ」
「部長の仕業、だな?」
「そうだろうな」
弘斗は話しながら、外に出られる箇所はないか探した。
しかし由貴が言った通り、窓すらなかった。
ドアだけが外界とつなぐ経路のようだ。
その唯一の経路も外部から鍵をかけられているらしく開けることはできなかった。

「完全に閉じ込められてしまったようだな」
一頻り部屋の中を確認した弘斗は諦めたように座り込んだ。
「そうだな」
「何のためだと思う?」
「口封じに消されるとか?」
由貴が恐ろしいことを口にした。
「縁起でもないこと言うなよ」
「今の場合あり得ないことでもないだろ?」
「だから言うなって言ってんだ」
「そうだな。特に俺は女の姿のまま殺されるわけにはいかないしな」
由貴がやや自嘲気味に呟いた。
二人は押し黙った。

沈黙を破ったのは由貴だった。
「元気出そうぜ」
「本当にこのまま消されるのかな?」
「何言ってんだ。こんないい女になったんだぞ。どこかに売られても殺されるわけないだろ」
「お前、強いな」
「女は強いもんだ。景気づけに一発やろうぜ」
由貴が服を脱ぎ出した。
「お前、何考えてんだ?」
「もうすぐ殺されるかもしれないんだろ?だったら今やりたいことやったほうがいいだろ?」
「それがセックスなのか?」
「そうだ。あんなに気持ち良くなるものは他にはない。断言できる」
「そうなのか?」
「そう、間違いない。どうせ逃げ道はないんだから、開き直ってやろう」
由貴は全裸になった。
「それにしてもそんな気分にならないし」
「だったらそこで寝てろ」
由貴は弘斗を軽く押した。
弘斗は力なくベッドに仰向けに倒れた。
由貴は弘斗のズボンのチャックを開けて、ペニスを引っ張り出した。
「由貴、お前…まさか……」
「由貴はやめて。ユキって呼んで。今は本物の女だから」
由貴はそう言って弘斗のペニスに顔を近づけた。
弘斗はそんな由貴をじっと見つめていた。
両手でペニスを包むように持つと、パクッと口に銜えた。
弘斗は驚いた。
まさかフェラしてくれるとは思わなかった。
あっという間に硬度を増した。
弘斗は由貴の口の中に放出してしまった。
そしてその後も憑かれたように二人は交わり続けた。


弘斗が由貴を突いていると、傍で咳払いする音がいた。
家村が立っていたのだ。
驚いた弘斗は慌てて由貴から離れた。
「お前たち、ずっとやってたのか?」
由貴はとろんとした目で家村を見た。
「何だ、ずっと見てたんすか?変態ですね」
由貴はそう言って、セックスで疲れた上半身を起こした。
「こうして見ると、本当にいい女だな。俺も味見させてもらおうか」
そう言ったかと思うと、弘斗は思い切り蹴られた。
床で頭を打ち、意識を失った。


「あん…あん…あん…あん…あん………」
気がつくと、家村が由貴を貫いていた。
「おお、気がついたか。こいつはなかなかいい女だな」
弘斗は家村に掴みかかろうとした。
しかしそれはかなわなかった。
机の脚に後ろ手に縛られていて、動くことができなかったのだ。

「畜生、どうしてこんなことを…」
「こんなことってどんなことだ?お前の友達を抱いていることか?」
「それもある。由貴を抱くのはやめてくれ」
「なぜだ?お前の彼女ってわけじゃないだろう?お前だって南野が女になったから、欲求を抑えられずに襲ったんだろう」
「そ…それは……」
「それが男の本能ってもんだ。仕方ない」
家村が由貴への抽送を続けながら言ったときだった。
「俺が…誘ったんだ…」
由貴が喘ぎながらそう言った。
すると家村が由貴の頬を叩いた。
「女らしくしろと言ってるだろう」
「…ご…めんなさい……」
「こいつにはまだまだ教育しないといけないみたいだな」
家村が弘斗に向かって言った。
「それよりこれを外せ」
弘斗が叫んだ。
「上司にそんな口の利き方をするとはお前にも教育が必要だな」
「人を縛っておいて上司も部下もあるもんか」
由貴が「そうだ」と言うと再びビンタされた。
その間もずっと家村は由貴を突き続けていた。
弘斗はそんな状況をジッと見ていた。
弘斗はそんな二人を見て興奮していた。
「お前から誘ったってことはお前は女になってすぐに男を誘ったのか。男のくせに淫乱女の素質があったみたいだな。ついでにいいことを教えてやろう。あの薬で性転換しても基本的にはもう一度薬を飲めばいつでも戻れるんだ」
そこまで言うと由貴をジッと見た。
「ただし条件がある。飲んでから薬の効果が落ち着くまではセックスしてはいけないんだ。それは戻れなくなることがあるからだ。目安は大体10時間程度ということだが、安全を見て丸一日は抱かないように言われている。俺の言ってる意味が分かるか?」
家村の腰の動きが速まった。
そして射精した。
由貴は身体を仰け反らせていた。
弘斗のペニスが最高に大きく硬くなっていた。


「も…戻れないの、あたし?」
由貴が訴えるような視線を家村に向けた。
家村の制裁を恐れてか言葉遣いは女のものだった。
「それじゃ試してみるか?」
あのドリンクを数本差し出した。
由貴は1本受け取り一気に飲み干した。
何も起こらなかった。
数分待った。
やはり何も起こらなかった。

もう1本飲もうと手を伸ばした。
「諦めろ。お前はもう女だ。ヨシタカではなくユキなんだ。お前がそれを受け入れなければお前たちが自由になることはない」
「そんなこと言われたって無理だ……」
家村は由貴をビンタした。
「どうせ言うこと聞いたって戻れないんだろ!」
また叩かれた。
そんなやりとりが3度ほど続いた。
ついに由貴が折れた。
「ごめんなさい。あたしはユキになります」
「そうだ。少しずつでも女になれ。女になって、幸せな結婚生活を送っている奴もいるんだ。お前も覚悟を決めろ」
「分かりました」
由貴は女になることを選んだ。
選ばされたというべきかもしれない。
そんな由貴に対し弘斗は何も言えなかった。

「それじゃ明日また来る。それまでせいぜい女を磨いておくんだな」
家村は服を着て帰り支度を始めた。
「彼のこと、どうしたらいい?」
「ああ福山か。あいつはそのままにしておけ。食べる物は死なない程度に与えてやってくれればいい」
家村が出て行こうとしたとき最後に言い放った。
「ユキ、この部屋は常に監視されていることを忘れるなよ」

家村が出て行くとすぐに由貴が弘斗のところに来て、拘束を解こうとした。
「何してんだ、この部屋は監視されてんだろ。後で酷い目に遭わされるかもしれないんだぞ」
「あいつが来る前に元通りにしたらいいさ」
そう言って由貴は拘束を解いてくれた。
「明日制裁を加えられるとしたら一緒だ」
「ありがとう…」
由貴が弘斗の背中に額をつけた。
泣いているようだ。

その夜、ひとつのベッドに一緒に寝た。
「抱かないのか?」
由貴が弘斗を誘った。
「いや、いい」
弘斗はすかさず断った。
「あいつのこと、忘れさせて欲しいんだけど」
「…ごめん……」
「そう…今日は疲れたからな…」
由貴は何か言いたいようだったが、何も言わなかった。
その日はおとなしく寝た。


次の日、家村が来たのは夜になってからだった。
弘斗はまだ拘束していなかった。
「俺が来るまでに拘束するんじゃなかったのか。さっさと縛れ」
「はい」
「福山、お前は服を全部脱げ」
弘斗は全裸になり、おとなしく手を後ろにやった。
その手首を由貴は紐で縛った。
「それじゃ俺の命令を聞かず、福山を自由にした罰を受けてもらおうか」
「何をするの…」
「こっちに来い」
由貴は恐るおそる家村に近づいた。

「それじゃまず裸になれ」
由貴が全裸になると、家村は由貴に手錠をかけた。
「やめろ!」
手錠をかけられた由貴は思わずそう叫んだ。
次の瞬間家村の手が由貴の頬を打った。
「文句言ってないで、おとなしく手を出せ」
差し出された両手にかかった手錠にロープをつけた。
そして由貴をベッドに押し倒し、ロープをベッドの頭部に括りつけた。

「何をするの?」
「特に痛いことはしない。まずは無駄毛の処理だ。優しいだろう」
家村は脱毛ムースを取り出した。
そしてそれを由貴の腋に塗った。
「昨日から気になっていたんだ。せっかく綺麗な女になったのに腋毛は興醒めだからな」
家村はチラッと由貴の顔を見た。
「ついでだから脚も綺麗にしといてやろう」
そして脚にも冷たいものが塗られていくのを感じた。
その感触が下腹部にもあった。
「そんなとこまで…」
「文句を言える立場か!」
恫喝され、由貴は震え上がった。
チリチリと軽い痛みを感じたが、おとなしく我慢した。
数十分後、ようやく濡れたタオルで綺麗に拭き取られた。
拭いたあとは無駄毛のない綺麗な状態になっていた。
もちろんそれは股間にも効いた。
女性器がはっきりと見えるようになったのだ。
これが罰なのか。
この程度で罰が終わるのならラッキーだ。
由貴はそう思った。
だがそれは甘かった。

「それじゃこれをつけてやろう」
ピンク色のローターだった。
それが何のためのものかはすぐに分かった。
それで由貴を弄ぼうというのだろう。
「やめて…」
「こんな気持ちのいいことでお前の犯した罰を許してやるなんて俺は優しいだろう」
左の乳首にあたるようにローターをつけられた。
そしてそれはもちろん右の乳首にもつけられた。
「それじゃ楽しい時間を過ごしてくれ」
ウィ〜ン。
小さなモータ音を発して、その小さなピンク色のロータは振動を始めた。
それは由貴に間断なく強い快感を与え続けた。
「あああああ……やめて……」
由貴は身をよじって、その感触に耐えた。
由貴が快感に苦しんでいる間に、由貴に気づかれないように足首にロープをつけ、ロープの先はベッドの脚に繋がれた。
そのロープのせいで脚が広げられた体勢になった。
「それじゃもうひとつつけてあげよう」
陰毛がなくなった割れ目を広げ、小さな突起物にあたるようにもうひとつローターをつけられた。
「そ…そんなとこ………わああああああああ………」
気が狂いそうになりそうなほど恐ろしい快感に襲われた。
「そんな……やめて……あああ…おかしくなるぅ………」
「電池が切れるまで楽しんでてくれていいからな」
家村は少し離れたところで椅子に座って、由貴の様子を眺めていた。
由貴はよだれをダラダラ流しながら快感に苦しんでいた。
息も満足にできない状態だった。
そんな苦しんでいる由貴の姿が目の前にあるにもかかわらず、弘斗はなぜか興奮していた。
弘斗はそんな由貴の姿を見て、ペニスを大きくさせていたのだ。

由貴はローターからの快感に襲われ続けた。
ほとんどずっと絶叫している状態だった。
頭の中が崩れていきそうに感じた。
正気と狂気の狭間で、それでも貪欲に快感を貪り続けた。
由貴にとっては数時間に及んでいるように感じた。
実際の時間は数十分程だったのかもしれない。
時間の感覚なんてメチャクチャになっていた。
目の前にローターに苦しんでいる由貴の姿があった。
弘斗はそんな由貴の姿に興奮していった。
由貴が何度か気を失った。
その度に弘斗も射精しそうになった。
しかし直接扱くことができないせいかなかなか出すことができなかった。
それでもあるタイミングでいくことができた。
ドクドクと精液が出たのだ。

「ほお〜、ユキが悶えているのを見ながらいってしまったのか」
家村が蔑むように弘斗を見た。
「福山の射精に免じて、これで終わりにしてやろう」
家村はローターを止め、ローターを取るため由貴の身体に触れた。
「あんっ」
由貴から悩ましい声が漏れた。
「身体がかなり敏感になっているようだな」
家村の手が由貴の身体の上をすべっていった。
それに呼応するように由貴の口から喘ぎ声が漏れた。
そんな由貴に対して家村は手を止め「今日はこれで終わりにしようか」と言った。
「そんな…。…最後まで…お願い……」
「そう言われても今日は疲れているからな」
実際家村のペニスはそれほど大きくなっていなかった。

由貴が家村の手を引っ張りベッドに寝かせた。
そしてズボンのベルトを緩め、それをずらした。
ブリーフからペニスを出し、それに舌を這わせた。
「フェラしてくれるのか?」
由貴は家村の言葉が聞こえていないかのように一生懸命舌を這わせた。
そして全体を銜えペニス全体を舐め尽した。
「なかなかうまいぞ」
由貴は頬張るようにして顔を上下させた。
「もういいぞ。これ以上やられたら出てしまいそうだ。四つん這いになれ」

由貴は言われた通り、四つん這いになった。
家村の手が由貴の腰を持ち上げ、少し腰を上げるようにした。
由貴も肘をつけ、尻を上げるような体勢になった。
「んんん…」
家村のペニスが入ってきた。
正常位とは違って、奥まで入ってくるような感じがした。
家村の手が由貴の腰を掴んで激しく突いてきた。
「…あああん………すご…い………」
由貴の乳房が揺れた。
由貴の身体からは力が抜けていき、手で身体を支えることもできなくなった。
顔を布団につけて家村に突かれた。
弘斗を見ると息を荒くしていた。

「ユキ、行くぞ」
「来てぇ…」
家村が腰をドンッドンッドンッと打ちつけた。
家村が由貴の中に出した。
由貴の意識が飛んだ。

弘斗も同時にいった。



それからもほとんど毎日家村と由貴のセックスを見せられていた。
来る日も来る日も二人は交わった。
弘斗も由貴もずっと軟禁状態で時間の感覚が曖昧になっていた。
おそらく10日以上は経っていたのだろう。
その間、弘斗は24時間手錠をつけられていた。
しかし拘束具はそれだけで、部屋の中は自由に行き来することができた。
ただ二人が抱き合っているときだけはベッドのすぐそばで拘束された。
二人が抱き合っている様子で弘斗は最高に高まるのだ。
由貴がいくと必ず弘斗もいけた。
弘斗と由貴は絶頂が同期しているかのようだった。

「今日は福山がユキを抱いてやれ」
家村は弘斗の手錠を外した。
弘斗は急に考えもしないことを言われて戸惑っていた。
それでも家村に命じられるまま由貴に近づいた。
「ユキ、彼氏にサービスしてやるんだな」
由貴はチラッと家村を一瞥すると、真っ直ぐ弘斗のほうを見た。
「弘斗、抱いて」
弘斗は何となく違和感を感じた。
前に抱き合ったときと感じが違ったのだ。
女…。
そう、女だ。
前は演技として女を演じていたが、目の前にいるのはまさに女だ。
家村に毎日抱かれて由貴は女になってしまったのだ。
そう思うと自然に涙が出た。
「どうして泣くの?」
由貴が舌で涙を舐めた。
「しょっぱい…」
そう言って弱々しく笑った。
弘斗は由貴のことを心底可愛いと思った。
ついさっきまで可哀想と考えていたことも吹き飛んでしまった。
弘斗は自分の衝動を抑えようともせず、由貴に飛びついた。
「キャッ」
可愛く叫んで二人はベッドで抱き合った。

弘斗は唇を由貴の唇に重ねた。
拒否されなかった。
舌を入れた。
由貴もそれに応えてくれた。
弘斗は口、首、肩、胸、乳房へと唇を移動させた。
由貴は弘斗のキスの嵐を受けながら、手を弘斗の下腹部に伸ばした。
そこはまだあまり硬くなっていなかった。
「大きくなんないね」
そう言ってそこに顔をもっていった。
そして柔らかいままのペニスを口に入れた。
由貴の口のおかげで少しは硬くなったが、由貴への挿入はできなかった。
「久しぶりだもんね」
由貴の慰めが悲しかった。

「何だ、ダメなのか。それじゃ俺が代わってやるよ」
家村が由貴を抱くのをみると勃起した。
自分で抱いても硬くならずに、家村に抱かれる由貴を見ると硬くなるなんて。
ただの変態じゃないみたいだ。
何だか自分が男でなくなっていくような気がしてきた。

「何の役にも立たないんだったら、男なんてやめちまえ」
家村はあのドリンクを差し出した。
弘斗は力なくそれを受け取った。
「ほら、早く飲めよ」
促されるまま弘斗は飲んだ。
身体が熱くなった。
「あああああ……」

弘斗は女になった。

「俺の予想通り俺好みの女になったな」
家村は弘斗を見てニヤニヤ笑った。
「しかし気持ちはまだ男のままだろう。俺は男を抱く趣味はないからな」

家村はそう言って、女になった弘斗を抱こうとしなかった。
由貴を抱いているのを見せられるだけだった。
毎晩毎晩二人のセックスを見せつけられた。
それを見て弘斗は股間を濡らした。
毎日まるで小水を漏らしたように床がビショビショになった。
次第に弘斗は身体の内部から湧き上がってくる欲求を抑えきれなくなっていた。

ベッドではセックスを終えたばかりの家村と由貴が抱き合うように横たわっていた。
「お願いします、僕を……抱いてください」
ついに弘斗は家村に懇願した。
「僕?自分のことを"僕"という女はあんまり好きでないな」
「すみません、私を抱いてください」
「お前は男か?それとも女か?」
「私は女です。だからお願いです、抱いてください」
「ははは…何だ、もう降参か。意外に早かったな。ユキ、福山を自由にしてやれ」
由貴が弘斗の拘束を解いてくれた。

弘斗は家村に近づいた。
「俺はユキとやった後で疲れてるから、やりたければ自分でやってくれ」
弘斗は家村のペニスに手を伸ばした。
ペニスには二人の体液がついていた。
それを柔らかく握り、その先を指で擦った。
「手じゃなく口でやってくれよ」
家村はニヤニヤ笑っていた。
弘斗は自分の欲求を満たすために、家村の言うことにおとなしく従うことにした。
精液と愛液にまみれたペニスに顔を近づけた。
かなりの異臭を放っていた。
ペニスを銜えるだけでも抵抗があるのに、この臭いはきつかった。
それでも弘斗は我慢することにした。
弘斗は息を止めて、一気にペニスを銜えた。
吐きそうになった。
それを我慢して、少しずつ舐め上げた。
「歯をたてるなよ」
家村が頭を撫でた。
弘斗は歯が当たらないように注意した。
「なかなかうまいじゃないか。初めてとは思えんな」
やがて臭いは気にならなくなった。
それどころか自分の舌の動きにペニスが反応するのが面白くなってきた。
弘斗は一生懸命ペニスを舐めた。
家村のペニスは確実に硬くなってきた。

「おい、そろそろ入れてくれていいぞ」
弘斗は家村にまたがった。
そしてペニスを持ち、自分の膣口にあてた。
腰をゆっくりと沈めていった。
初めての痛みはなかった。
しかし何とも奇妙な感じだった。
快感というものではなかった。
身体に異物が入ってくる違和感があった。
それでも空虚な心が満たされていくような感覚があった。
「はあああああ……」
無意識のうちに弘斗の口から声が漏れた。
やがて家村のペニス全体を自らの女性器で銜え込んだ。
「感じるか?」
家村は弘斗を見上げながら言った。
「分からない…」
何か変な感触があるだけで、取り立てて気持ちがいいものではなかった。
(女の感じ方は男の何倍もいいなんて嘘だったのか)
弘斗はそんなことを思っていたときだった。
家村が腰を軽く動かした。
「…あ…ぁん………」
「いい声を出すじゃないか、弘子」
「ひろこ?」
「そうだ、お前は弘子だ。俺がお前を女にしてやったんだ」

家村がゆっくり何度も腰を動かした。
そのたびに弘斗からは甘い声が洩れた。
(これはすごい。女の快感はすごい……)
弘斗はすでに快感に飲み込まれていた。
「感じてるんだろ。お前のオマンコが俺の一物をギュッギュッと締め付けてくるぞ」
弘斗は何も考えられなくなっていた。
「お前は俺の女だ。女らしくしてればいつでも抱いてやるからな」
「…分かりました、部長……」
「その部長はやめてくれ。パパとでも呼んでもらおうか。いや、それより名前のほうがいいかな、高明さんとな」
「高明さん…すごい……」
「いいか?」
「いい……すごくいい……」
「弘子も動いてくれ」
「こう?」
弘斗は腰を上下させた。
そうすることでさらに強い快感を得られた。
より強い快感を得るために。
腰の動かし方によって強い快感が得られた。
自分が上にいることで、それをコントロールできることが面白かった。
弘斗は狂ったように腰を振った。
振りまくった。

「弘子、体勢を変えよう」
家村は上半身を起こした。
そしてつながったまま弘斗を倒した。
正常位の体勢になった。
「弘子、いくぞ」
家村が弘斗の腰を持ち、強く突いた。
「あ…あ…あ…あ…あ………」
家村に覆い被さられて突かれていると家村に征服されているような気がした。
そのためか弘斗は妙に興奮した。
「高明さん…もっと…もっと……」
弘斗は自分で何を話しているのかすら意識していなかった。
「弘子、お前も腰を振れ」
弘斗は言われた通りに腰を動かした。
「いいぞ…いいぞ……」
家村の腰の動きがさらに激しくなった。
「弘子、出すぞ」
「高明さん、来て…来てぇ……」
家村の熱い物が身体に放たれたことを感じた。
弘斗は背を反らして強い快感を感じていた。

「やっぱりお前は最高の女だ」
セックスで疲れた弘斗に家村は何度もキスをした。

それから家村は弘斗を中心に抱いた。
弘斗は由貴に勝ったと思っていた。
女としては自分のほうが上だと。
自分は家村に愛されているんだと。
弘斗は自分が女性になったことをプラスにとらえていた。

そんなある日のこと、いつものように家村と抱き合った後だった。
「お前は理想的なダッチワイフだな」
ふと家村が洩らしたそんな言葉が弘斗の気持ちの何かのスイッチを入れた。


いつものように家村がやってきた。
そしていつものように由貴ではなく、弘斗が抱かれた。
最初は正常位、それ後に後背位で突かれた。
「ああ……高明さん……いい……」
弘斗はいきそうになったが、弘斗は自ら腰の動きを止めた。
「弘子、どうしたんだ?」
すぐに家村が弘斗の様子が変わったことに気づいた。
そして腰を動かすのをやめた。
「私が上になりたいの」
「そうか、久しぶりだな」
家村はペニスを抜き、仰向けに寝た。
弘斗は家村にまたがり、まだいきり立っているペニスを迎え入れた。

すると家村が弘斗の腰を持ち、弘斗の腰を上下させた。
「あああ……ぃぃ……」
家村の手の動き以上に激しく腰を動かした。
「お…おい……そんなに激しくしたら…」
そのときペニスが膣から外れた。
弘斗はそのまま勢いよく腰を落とした。
「痛い!」
ペニスが折れた。
陰茎骨折だ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、……」
家村は股間を押さえていた。
「すぐに病院に行かなきゃ」
「…いや、大丈夫だ…」
それでも痛みのせいで冷や汗が出ていた。
「それじゃ痛み止めだけでも飲んで」
弘斗は薬を取り出して、家村に渡した。
「ああ……サンキュー」
家村は受け取って、弘斗に渡されたコップの中身とともに一気に飲んだ。

「ん?これは」
家村が身体に異変を感じた。
焼けるような熱さを感じるのだ。
それが治まると身体が変わっていた。
「高明さん、痛みはなくなったんじゃない?だって痛みの元がなくなったんだもん」
「えっ、どういう…」
そこで家村は口を押さえた。
声にも変化があったのだ。
そう、家村は女になったのだ

「薬がどうしてあるんだ?」
「今までに持ってきたときに余分に持ってきてたでしょ、あれを隠しておいたの」
「まだあるのか?だったらすぐに戻せ」
家村が掴みかかってきた。
「そんなに慌てないで、一度自分の姿を見てみたら?」
弘斗が家村を鏡の前に連れていった。
「えっ、これが俺なのか?」
鏡に映った家村は30歳前後の女に見えた。
10歳以上若返ったみたいだ。
家村の好きなタイプの女性だった。
家村はジッと自分の姿を見つめていた。
「どう?気に入ってくれたみたいね。名前は…そうね…高子ちゃん?それより明子ちゃんのほうがいいかな?」
いつの間にか由貴が家村の背後に立っていた。
「これから私たち二人があなたに女の良さをしっかりと教えてあげる」
家村は驚いて由貴のほうに振り返った。
その途端、由貴が家村を押し倒した。
由貴が家村の胸を掴んだ。
「痛いっ!」
「それじゃこれは…」
由貴は優しく揉んで、乳首の先を擦るようにした。
「…んんん……」
「感度はいいみたいね、明子ちゃん」
由貴が家村の乳房を舐めながら、身体の向きを変えた。

「こっちはどんな感じかな?」
弘斗が家村の股間に潜りこんできた。
「や…やめろ……」
由貴から受ける乳房の感触にもだえながら家村が抵抗の言葉を口にした。
しかしそれは口先だけだった。
「どうして?気持ちいいのに…」
そう言って家村の下腹部の溝に沿って指を動かした。
そうして溝を広げて小さな突起物に息を吹きかけた。
家村の身体が一瞬ピクンッとなった。
「これがクリトリスよ。舐めてあげるわね」
弘斗がペロンと一舐めした。
「ひぁん」
家村の口から奇妙な声が漏れた。

「どう気持ちいいでしょ?女になって良かったでしょ?」
「そんなこと…ない……」
「そんなこと言っても身体は正直に反応してるわよ」
弘斗は家村のクリトリスに触れながら顔をジッと見ていた。
弘斗の指には家村の粘液がついていた。
家村は顔を横に向け何も感じてないかのように目を閉じていた。
「ところで…私を女に変えたときのこと覚えてる?」
家村は弘斗の言葉を無視した。
あるいは快感のせいで言葉が聞こえていないのかもしれなかった。
「私は1週間以上犯されなかったのよ。ということは……」
家村の目が開いた。
弘斗の言葉は届いていたのだ。
「あたしは薬を飲めば男に戻れるってわけ」
家村の顔が歪んだ。

弘斗はドリンクを掴み、一気にそれを飲んだ。
そして数秒の後、弘斗は男に戻った。
「久しぶりの男の身体のせいか何か違和感があるわね。こんな話し方してたら、何だかおかまみたいでしょ?」
弘斗は平坦になった自分の胸を触った。
そして、下腹部に目をやるとニヤリと笑った。
「女にならされた時って、私ってインポになったんだけど、なぜかあなたを犯るって考えるとホラッ」
そこは大きくなっていた。
弘斗は家村の足を大きく広げた。
「や…やめろ。やめてくれ」
家村は抵抗しようともがいたが、男に戻った弘斗には抗えなかった。
「さあ、私のこれであなたはもう男に戻ることはないのよ」
弘斗は家村の中に自らのペニスを押し込んだ。
「痛いっ!」
家村の顔が痛みで歪んだ。
「ごめんね。もしかしたら準備が足りなかったかしら」
弘斗はゆっくりゆっくり腰を降り始めた。
「これであなたは男に戻れないってわけね」
弘斗は家村の腰をつかんでリズミカルに腰を振った。
クチュクチュという音が鳴り出した。
十分な愛液が出てきたようだ。
すると家村の口から甘い声が漏れ始めた。
「…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ……」
「感じる?気持ちいいでしょ?」
家村は必死に首を横に振った。
「強情ね。気持ちいいくせに」
弘斗はさらに激しく腰を打ちつけた。
「ああ、出そう…出る…」
「やめ…、やめろ……」
「もう、ダメ。出すわよ」
弘斗は思い切り家村の中に大量の精子をぶちまけた。
家村は背中を反らせて身体を痙攣させた。
いったようだ。

「感じてくれたようね、明子ちゃん」
家村は弘斗に背中を向けて何も返事しなかった。
「へそ曲げちゃって。機嫌直してよ。ねっ、試しにもう1本飲んでみる?」
弘斗は家村にドリンクを渡した。
家村は無駄だと思いながらも飲まずにはいられなかった。
手渡されたドリンクを一気に飲んだ。
しかし何も起こらなかった。
「やっぱり女の子のままね、可愛いわよ、明子ちゃん」
「くそぉ」
「言葉遣いが汚いわね。そんなんじゃ皆に可愛がられないでしょ?」
「俺は女になんかならない」
「それは好きにしたらいいわ」
そう言って弘斗は立ち上がった。


「それじゃここから出るわよ」
「えっ、それは…」
家村は言い淀んだ。
「何か不都合でもあるの?一生ここで過ごすわけにはいかないでしょ?」
弘斗はここに運ばれたときの服を着た。
「それじゃ私も」
由貴も弘斗にしたがった。
「明子も早く服を着たらどう?」
家村は着てきたスーツを着ようとした。
「そんな恰好じゃおかしいでしょう」
「俺はこれでいいんだ」
「由貴、こいつに合う服、出してよ」
由貴が部屋のタンスから一着の服と女性下着を出してきた。
「これなんかどう?レディスのスーツよ」
出されたのはベージュの女物のスーツだった。
スカートが明らかに短かった。
「あら、いいわね。それじゃそれを着て会社に行きましょうか」
弘斗の言葉に家村が青ざめた。
「それはやめてくれ。こんな恰好誰にも見られたくない」
「諦めが悪いわね。少し教育しないといけないわね」
弘斗が家村の脚を払った。
家村は簡単に尻もちをついた。
弘斗は家村の脚を持ち、思い切り脚を広げた。
「確かこいつが持ってきたバイブがあったよね」
「それなら確かこの辺に…」
由貴が机の引き出しからピンクのバイブを出した。
「それじゃしばらくの間、女の喜びを感じてなさい」
弘斗は家村の中にバイブを突き立てた。
そしてリモコンの最大のパワーで動かした。
「わあああああ…やめろ…やめてくれぇ…………」
抵抗しようとする家村の手を弘斗と由貴の二人で押さえつけた。
家村は脚をばたつかせて抵抗を試みたが、次第に快感に飲み込まれていった。
抵抗する力は弱くなり、甘い声を出し続けた。
「そろそろこの服を着る気になった?」
「わ…分かった。着るからこれを止めてくれ……」
「自分の立場が分かってないようね。それが私に対する頼み方なの?」
「す…すいません。レディスのスーツでも何でも着るから、これを止めてください」
「なんだかちょっとやけくそ気味って感じで反省なんかしていないみたい…」
「ごめんなさい。私、女性のスーツを着たいんです。だから…これ以上…許して…止めてください……」
「反省したんだな」
弘斗はスイッチを切った。
「ただし、今日は一日中、入れておくんだ。分かったな」
急に弘斗の言葉遣いが乱暴な男っぽいものに変わった。
これには家村だけでなく由貴も驚いた。
「……はい」
「それじゃさっさとこの服を着ろ」
家村は自分の内股を濡らしている液をティシュで拭った。
そしてショーツに脚を通し、苦戦してブラジャーをつけた。
「ついさっき女になったばかりなのに、着慣れてるって感じだな。もしかしたら男のときからそんな趣味でもあったのか?」
下着姿の家村を見ながら、からかうように弘斗が言った。
しかし家村は弘斗の言葉が聞こえていないかのように完全に無視した。
そしてパンストを穿き、白いブラウスを着て、スーツを着た。
スカートはタイトスカートで股下10センチもなかった。
少しかがむだけで下着が丸見えのような気がするほどだ。
家村は落ち着かずスカートを少しでも下げようと手を引っ張った。
「よく似合ってるぞ。ムラムラしてくる」
そう言って弘斗は家村のお尻を嫌らしく撫でた。
「やめろ」
「やめろ?」
「ごめんなさい。やめてください」
「そうそう。ようやく少しは自分の立場が分かってきたようだな。しかしすぐ言い直したとは言え、罰は受けなきゃな」
弘斗はバイブのスイッチを入れた。
「…ぁ…やめて……」
「なかなかいろっぽいぞ、明子。そのいろっぽさに免じて罰はこれだけにしてやろう。これから気をつけるんだな」
「…分かりました」
「それくらい女は素直でなくちゃな。それじゃ出掛けようぜ」
弘斗は家村と由貴を駆り立てて、部屋を出た。

「久しぶりの外出だな。さてどこに行こうか」
弘斗と由貴が並んで歩いた。
そしてその後ろを家村がついてきた。
「明子、どこに行きたい?何だったら逃げてもいいぞ。逃げればバイブのスイッチを入れるがな」
弘斗は後ろを振り返った。
「急いで逃げればバイブのリモコンも届かないところに逃げれるかもしれないしな」
それでも家村は逃げることもなく、弘斗の後ろをついてきた。
「そんなにおとなしくちゃ面白味がないな。どうせならもう少し騒いでほしいくらいだ」
家村からは何の返答もない。
「それじゃこれからどこに行くか教えてやろう。会社だ、これから会社に行く。これからの俺たちの処遇を決めないといけないからな」
「嫌だ。こんな姿で会社に行けるかっ」
家村は慌てて逃げようとした。
しかしなれないスカートのせいかすぐにバランスを崩し転んでしまった。
「約束を破って逃げようとするからだ。そんな女には罰が必要だな」
「やめろ…やめて……」
懇願する家村の顔を覗き込むようにして弘斗は手に持ったスイッチを入れた。
家村の中のバイブが動き出した。
強い快感が湧きあがってきた。
「…ぁ……ダメ…やめて……」
家村は転んだ状態で呻いた。
「公衆の面前でいつまでそうしてるんだ。早く立てよ」
そんな弘斗の言葉に、家村は立ち上がろうとした。
そのとき弘斗はパワーを最大にした。
「…ぁ…ぁぁぁ………」
声を抑えるように唇を真一文字に閉じて中腰の体勢で耐えた。
「おとなしくついてくるか?」
家村はただただ肯くだけだった。
「よし、いい子だ。それじゃ行こうか」
弘斗はパワーを最小にした。
家村は何とか立ち上がることができた。
しかし間断なく快感が押し寄せてきた。
「お願い…止めてください……」
「これくらいだったら何とか歩けるだろう。それに気持ちもいいんだし」
弘斗は由貴の腰に手を回し歩き出した。
「明子、ちゃんとついてこいよ。ついてこなければまた最大パワーにするぞ」
「分かりました…」
家村は必死に弘斗たちの後をついていった。
自らが分泌した粘液が内股を濡らしていた。

会社に着いた弘斗は真っ直ぐ人事部に行った。
「どうして福山くんがこんなとこに…」
人事の田坂部長は弘斗の顔を見て明らかに驚いた顔をした。。
「どうしてそんな驚いているんですか?社員が人事に顔を出しても驚くことはないでしょ?」
「いや…それは……」
「ここで話を続けていいですか?」
弘斗は周りの社員の顔を見回した。
「いや、どこかに行こう」
弘斗たちは田坂に連れられて、会議室に移った。


会議室に入ると、弘斗が最初に口を開いた。
「まずは紹介しておきましょう。彼女が南野です。家村部長から聞いてましたよね?」
田坂は苦い顔をして肯いた。
「それでこっちが」
弘斗はわざと間を空けた。
家村は視線を下に落としたままだった。
「家村部長です」
「えっ!」
田坂が思わず驚きの声をあげた。

「どうして家村さんが?」
「どうです?なかなかいい女になったでしょう。僕があの薬を家村部長に飲ませてあげたんですよ。ついでに僕が処女を奪ってあげましたし。おかげで男に戻れなくなったみたいですけど」
弘斗はニヤニヤ笑いながらパワーを少しあげた。
「…ゃ…ゃめて………」
家村は思わず椅子に座り込んだ。
「どうしたんだ?」
「明子ちゃんはセックスの味を覚えて、それが大好きで今もバイブをあそこに入れてるんですよ」
「明子ちゃん?」
「あ、家村部長のことです。高明だから高子か明子かってことで明子にしちゃいました。その明子が言うこと聞かないもんだから躾の意味で入れてます」
「何でしたら田坂さんのものを銜えさせましょうか?」
「えっ、そんなこと…家村部長がそんなことまでするのか……」
「当然です。明子はあれが大好きですから。どうですか、やらせましょうか」
「いや、そんなこと…いい……」
「そうですか。それじゃ僕がやってもらうことにしますね。明子、頼むよ」
「こんなところで?」
「ああ、そう言ってるじゃないか」
「……」
家村が無言で近づいて来た。
そして弘斗のズボンのチャックを開け、ペニスを取り出した。
田坂がその様子をジッと見ていた。
家村は意図的に田坂の視線を無視していた。
「早くしろ、明子」
「はい」
家村はおとなしく弘斗のペニスを銜えた。
「初めてにしちゃなかなかうまいじゃないか。男の感じるところを押さえているな」
家村は何も聞こえないようにペニスを舐めることに没頭しているように見えた。
「ところで」
家村にフェラチオを続けさせながら、弘斗が話し出した。
「僕たちは今どういう扱いなんでしょう?ずっと欠勤が続いていたわけですが」
「二人とも長期の無断欠席ということで懲戒処分することになっている」
「そうですか……。それじゃ家村部長は何かどうなってるんですか?」
弘斗の言葉に家村の口の動きが止まった。
弘斗がすぐにバイブを最大パワーにした。
「あああああああ……やめてぇぇぇぇぇ…………」
家村の口がペニスから離れた。
「ちゃんと一生懸命フェラしないか!」
「分…かり……ました……」
家村が何度も肯いた。
「それじゃ続けろ」
家村がバイブに苦しみながら、再び弘斗のペニスを銜えた。
弘斗はバイブのパワーを弱めた。
家村は落ち着いたようにペニスを舐めた。
「それじゃ話を戻しましょうか。家村部長はどうなったんですか?」
「一身上の都合で依願退職したことになっている」
「なるほど。それって僕たちにしたことへの処罰ですか?」
「いや、家村部長の意思だ」
「意思ねえ……ま、そういうことにしておきましょうか」
弘斗は真っ直ぐに田坂の顔を見た。

「ところで僕たちへの処分ですが、無効にできませんか?」
「いや、それは…」
「家村部長がこんな姿になったこと、マスコミに話してもいいんですか?」
家村は何も聞こえないかのように夢中で弘斗のペニスをしゃぶっていた。
弘斗はそんな家村の肩を掴み、フェラチオをやめさせた。
家村はおとなしく椅子に座った。
「会社ぐるみで男を女に変えていることがばれたらどうなるか分かりませんよ。まあ、表向きは責められても、陰では女になりたい男に薬が大ヒットして会社のためにはいいかもしれませんが」
「…考えてみる……」
「そんな消極的な返事は聞きたくありませんね。上層部には奥さんとのことを面白おかしく書かれる人もいるんじゃないですか?」
「家村さん、社長のことまで話したのか?」
田坂は家村を見て、思わず口を滑らせてそんなことを洩らした。
「へえ、社長の奥さんって元男なんですか?それは面白い情報をいただいたようですね」
弘斗はニヤリと笑った。
「いや、それは……」
田坂が黙りこくった。
少しの間沈黙の時間が流れた。
「取引成立ってことでいいですか?」
「分かった……」
田坂は苦虫を潰したような顔をした。
「もちろん家村部長の処遇も大丈夫ですよね?」
家村の表情が明るくなった。
「いや、それは……」
最初は渋っていた田坂だが、結局は飲まざるを得なかった。
ただし家村は社員ではなく派遣社員としてなら認めるということになった。
さらに二人とも会社が準備する戸籍を使うことが条件になった。
過去に純粋の女性の戸籍が必要になり、そういう方面には何らかのルートがあるようだ。
戸籍が準備できるまで二人は会社の用意したホテルで待機することになった。

弘斗はその日から何事もなかったように会社生活に復帰した。
上層部から指示のあった秘密プロジェクトの事前準備を行っていたということが、一ヶ月以上の不在の理由ということになった。
そして商品企画課という新たな部署が作られ、そこに異動となった。
その課の責任者は田坂が兼任ということになっており、実質弘斗だけの部署だった。



一週間後、二人に新たな戸籍が与えられた。
由貴は"佐藤安希子(23歳)"として、家村は"山下理緒(29歳)"として生きていくことになった。
由貴は年相応の戸籍だったが、家村は見た目に応じた戸籍が準備されたのだ。

安希子(由貴)は自身の希望通り、元の営業部隊に戻った。
女になったとは言え、相変わらずの調子で仕事をこなした。
男に抱かれることには抵抗がなく("抵抗がない"というよりも"好き"といったほうが正しいが)、男が女に何を期待するかは心得ているせいで結構もてた。
さらに仕事にもその点を活用しているようで、男性の時代よりも営業成績が伸びていた。

理緒(家村)は予定通り人材派遣会社から派遣された形でやってきた。
そして弘斗につけられた。
「山下理緒です。よろしくお願いします」
理緒(家村)は初々しく弘斗に挨拶した。
「うん、よろしく。それじゃ早速だけど、この資料を作ってもらおうか」
かつての上司である理緒(家村)に簡単な資料作りを命じた。
「は…はい、分かりました」
しかし理緒(家村)はPCの操作に慣れておらず、なかなか作業が進まなかった。
「何だ、こんなものくらいにいつまでかかってるんだ」
「すみません」
理緒(家村)を叱ることで、弘斗は興奮を覚えていた。


終業時間になった。
理緒(家村)の女子社員としての一日目がようやく終わりを告げたわけだ。
慣れない資料作成のためかなり疲れていた。
早くゆっくりしたくて急いで帰り支度を始めた。
「どこに帰るんだ?」
弘斗が声をかけた。
「ホテルです」
「ホテル住まいか、贅沢だな」
「でも早急に住むところを探さすよう言われてます」
「わざわざそんなところに金を使わなくてもいいじゃないか。僕のとこに来いよ」
「えっ?」
思わぬ言葉に理緒(家村)は耳を疑った。
そんなことになれば24時間が苦痛になってしまう。
理緒(家村)はそう思った。
「田坂さんから家族向けの社宅を準備してもらってあるんだ」
「家族向けの社宅ってうちにはそんなものはないはず……」
「さあ、そんなことは知らないが、田坂さんが準備してくれたんだ。来るよな」
弘斗に強く言われると理緒(家村)は拒否できなかった。
自分の本心にかかわらず弘斗の言うことにしたがってしまう。
すでにそういう心理状態になっていた。
「分かりました」
「それじゃ先に帰って待っててくれ」
「そんなこと言われても場所が……」
「そうか、それもそうだな。それじゃあと30分ほど待っててくれないか。一緒に帰ろう」

そして30分も経たず弘斗は仕事を済ませた。
「それじゃ帰ろうか」
理緒(家村)は覚悟を決めておとなしく弘斗にあとにしたがった。

会社を出てすぐ弘斗はタクシーを停めた。
そして理緒(家村)に先に乗せ、運転手に行き先を告げた。
それは一流ホテルだった。
ホテルに入ると、まっすぐ最上階のレストランに向かった。

あまりにも想定外の出来事に理緒(家村)は少し怯えていた。
何かたくらんでいるんじゃないか。
そのうち何か落とし穴があるんじゃないか。
そんな疑念が心を占めていた。

ワインが運ばれてきた。
弘斗はテイスティングを断り、ワインがそれぞれのグラスに注がれた。
「それじゃ二人の新しい関係に」
そう言って乾杯した。
新しい関係って?
理緒(家村)はそう確認したかったが、墓穴になりそうに感じ、ただただ微笑んでいた。

胃が小さなせいかメインディッシュの肉料理は半分程度しか食べられなかった。
それでも食事はおいしかった。
女性の身体になってこんなに高級な食事をとるのは初めてだった。
久しぶりに満たされたような気がした。
そんなささやかな幸福感は弘斗の言葉によって壊された。

「そろそろ帰ろうか」

着いたのは高層マンションの最上階の部屋だった。
弘斗が玄関扉を開けた。
この部屋でまた苛められるのだ。
理緒(家村)は重い足取りで部屋に入った。

「気に入ってもらえるか分からないけど」
居間に入ってすぐ弘斗が差し出したのはペンダントだった。
ダイヤのような宝石がついていた。
「えっ?」
理緒(家村)には意味が分からなかった。
何を企んでいるんだろう?

「つけてあげるよ」
弘斗が理緒(家村)の背中に回り、ペンダントを留めてくれた。
そして二人で鏡の前に立った。
胸元にはキラキラ光るダイヤが揺れていた。
「綺麗だ」
弘斗のそんな言葉に対し理緒(家村)の目からなぜか涙が落ちてきた。

弘斗の唇が優しく理緒(家村)の唇を塞いだ。
これまでのキスと違い優しさを感じるものだった。
理緒(家村)は静かに目を閉じた。

その夜はこれまでにない静かで優しい交わりだった。
何となく物足りなさを覚えたが、それ以上に心が温かくなった。

これが新しい関係なのかもしれない。
そんなことを考えながら、弘斗の腕の中で眠った。



その日から弘斗と理緒(家村)の同棲生活が始まった。
理緒(家村)にとって弘斗は職場では厳しいが、家では優しい存在だった。

商品企画課としては大きなヒットを出すことができた。
女性の更年期障害対策としての健康食品が大ヒットしたのだ。
女性ホルモンに似た成分を持った成分が更年期に効くとのことで評判になったのだ。
そのおかげで弘斗の部署はかなり注目されるようになり、次なる商品企画に期待がかかるようになった。
次の春には新人の高本誠志が配属され、部署としての体制が整いつつあった。

そんな中、理緒(家村)は今の自分の環境に対し幸福を見出そうと努力していた。
女性となってしまった今、それなりに大切にしてもらっている状況を甘んじて受け入れようという思いだった。
そうすれば精神的にもかなり楽になれる。
そう信じていたのだ。
しかしどうしても割り切れない思いがあった。
心の中に残っているドロドロとしたものがある。
その何かをどう処理していいのか理緒(家村)自身でさえ分からなかった。


そんなある日、弘斗が帰り道を急いでいるときだった。
正面から歩いてきた見知らぬ女性から声をかけられた。
そんなことは初めてだった。
思い返すと弘斗の女性経験は由貴と理緒(家村)の二人だけだった。
元男性ばかりで、純女とはやったことがないのだ。
初めての経験にワクワクする思いを抑えることができなかった。
当然のように弘斗はその女性のあとをついていった。
静かなバーに入って話をすると、予想以上に話が合った。
そしてその流れでベッドインした。
弘斗の興奮は最高潮に達した。
しかし、肝心の場面で弘斗の男性自身は全く役に立たなかった。
焦れば焦るほどどうしようもなかった。
どうする術もなかった。
女には罵倒された。
ショックだった。
弘斗はプライドをひどく傷つけられた。
そんな心理状態で理緒(家村)の待つ部屋に戻っていった。


理緒(家村)はすでに眠っていた。
弘斗は理緒(家村)を叩き起こした。
「あ…お帰りなさい」
弘斗は何も言わずに理緒(家村)を抱いた。
抱いたというよりも犯した。
犯しまくった。
理緒(家村)が相手ならペニスが雄々しく硬直化した。
どうしてこの女相手だったら勃起するんだ。
そんな思いをぶつけるような暴力的なセックスだった。

そんな暴力的なセックスに理緒(家村)も燃えた。
これまでのぬるま湯のようなセックスとは雲泥の差がある。
久しぶりに絶頂を感じた。
何度も何度もいった。

弘斗の精液を身体の中に受け入れると大きな満足感に満たされた。
そして同時に憎しみのような気持ちを感じた。
それは最初のころに抱いていた気持ちに似ていた。
不思議な感覚だった。
しかしそんな相反する気持ちの動きにも違和感はなかった。


理緒(家村)はセックスに疲れ切っていた。
しかしその姿は女としてセックスの余韻に浸っているかのように見えた。
かつて上司だった家村は今ではすっかり普通の女になったのだ。
(やっぱり女のほうがセックスに関しちゃ得なのかなぁ。僕も久しぶりに女になってみようかな…)
弘斗は理緒(家村)の様子を見てそんなことを考えていた。

「弘くん、どうしたの?」
その頃、弘斗は理緒(家村)に自分のことを"弘くん"と呼ばせていた。
理緒(家村)は弘斗の様子にいつもと違うものを感じたのだ。
「いや、別に…」
言葉を濁した。
言ってもいいのだが、思っていることをそのまま言うのは恥ずかしかった。
「当ててみようか。…私みたいに抱かれたいんでしょ?」
弘斗は言い返せなかった。
そんな弘斗を見て理緒(家村)はニコリと笑った。
「やっぱり図星なんでしょ?別に恥ずかしいことじゃないわ。それじゃ久しぶりに女の子になってみましょうよ?どうせすぐに戻れるんでしょ」
「そんなの…興味ないよ……」
「とにかく弘くんが女の子になっても私は抱いてあげるわよ」
理緒(家村)にそう言われて、気持ちが動くのを感じた。


次の日、会社からドリンク剤を持って帰った。
「弘くん、飲んで」
寝室で理緒(家村)が促した。
弘斗は理緒(家村)の言葉にドリンクを一気に飲み干した。
すぐに弘斗は女になった。
「弘くんじゃなくて、弘ちゃんね」
理緒(家村)は女になった弘斗にキスしながら、弘斗の乳房の先に触れた。
「ぁんっ……」
「弘ちゃん、可愛い」
理緒(家村)は指に唾をつけ、その指で弘斗の乳首を摘んだ。
「はんっ」
背中に電気が走ったような快感を感じた。
(これだ。この感じだ…)
弘斗は求めていた快感に喜びを覚えた。
理緒(家村)は丁寧に弘斗の胸を愛撫してくれた。

「ここもすっかり女の子になってるわよ」
理緒(家村)はいつの間にか弘斗の股間に顔を近づけていた。
「そこは…見ないで……」
なぜか見られることが恥ずかしかった。
でもそんな恥ずかしさが心地よかった。
弘斗の言葉を無視して、理緒(家村)がふっと息を吹きかけた。
息がかかったことで、その部分が濡れていることを感じた。
「分かったでしょ?弘ちゃんが感じて濡れてること」
そして温かいものを感じた。
理緒(家村)の舌が弘斗の女性の部分に触れたのだ。
「やめて…おかしくなるぅ……」
言葉とは裏腹に弘斗はクンニしやすいように脚を大きく広げた。
理緒(家村)のクンニは長く執拗に続いた。
弘斗は快感で意識が朦朧としてきた。
朦朧としながら快感をむさぼっていた。

理緒(家村)がクンニをやめた。
弘斗が不満そうに理緒(家村)を見ると、理緒(家村)はベッドの下に手を伸ばしていた。
そしてそこから何かを取り出した。
ペニスバンドだった。
そのペニスバンドを腰につけながら、理緒(家村)が嫌らしい笑みを浮かべた。
「このチャンスを待ってたんだ」
口調が変わった。
意識が理緒から家村に戻ったのだ。
弘斗は逃げようにも朦朧として身体が動かなかった。
膣口にペニスバンドの先があてがわれた。
「これでお前も男に戻れなくなるんだ」
「やめて…やめろ…」
理緒(家村)が一気に腰を突き出した。
弘斗の中にペニスバンドが入ってきた。
「…あうっ……」
理緒(家村)が弘斗の腰をがっちり掴み、腰を動かした。
「あ…あ…あ…あ…あ…あ…あ……」
理緒(家村)の動きに合わせ、弘斗も無意識に腰を振っていた。
「い…いくぅぅぅぅぅ………」
理緒(家村)の動きに激しさが加わった。
そして一気にペニスバンドを抜いた。
その瞬間に絶頂に達した。
弘斗は身体を反らせながら、快感に全身を痙攣させた。

「これでお前はもう男に戻れないぞ」
理緒(家村)が弘斗の頭を撫でながら、勝ち誇ったような顔をした。
「ねえ、もう一回突いて」
弘斗は理緒(家村)に言った言葉には答えず、甘えるようにセックスを要求した。
「何だ?もうすっかり女を受け入れたみたいだな。それじゃお前の愛液で汚れたこれをお前の可愛い口で綺麗にしてもらおうか」
弘斗は理緒(家村)に言われるまま、ペニスバンドを口に含んだ。
「お前には男のプライドはないのか」
理緒(家村)には一生懸命ペニスバンドを舐めている弘斗の姿が何とも情けなく映ったのだ。
「さすがにこんなものを口に入れられても面白くも何ともないな。もういい」
理緒(家村)は弘斗の口からペニスバンドを抜いた。
「それじゃ四つん這いになってもらおうか」
弘斗は言われるままに四つん這いになった。
ペニスバンドが入ってきた。
「…ぁぁぁ……ぃぃ……」
弘斗は無機質なペニスバンドに対し感じていた。
「どうだ。気持ちいいか」
理緒(家村)は思い切り腰を動かした。
そして弘斗も自ら進んで腰を振った。
こみ上げてくる快感。
弘斗はその快感を貪り尽くそうと懸命に腰を振った。
「あ…あ…あ…あ…あああああ……い…いくぅ…」
再び弘斗はいった。


その後も理緒(家村)が呆れるほどセックスをせがんだ。
作り物のペニスバンドとは言え、理緒(家村)のほうもかなり疲れていた。
「もういい加減にしろ」
理緒(家村)は弘斗の身体を突き飛ばした。

「何だ、もう終わりなの?もっと楽しませてくれなきゃ、せっかく女になった意味がないじゃない」
弘斗は気怠い身体に鞭打つように立ち上がった。
そしてベッドの傍に置いてあったドリンクを一気に飲んだ。

弘斗は男に戻った。

「嘘っ…。どうしてだ?……」
「技術は日進月歩してるだ。いつまでもあんな出来損ないじゃない。ちゃんと元に戻れる薬はできてるんだ。それにしてもおかげでお前の考えてることは分かった」
弘斗は理緒(家村)の髪を引っ張った。
「痛い…」
「さて、どうしてやろう。風俗にでも売り飛ばしてやろうか」
「許してください。お願いします」
「おとなしくしていれば、これからも仲のいい夫婦としてやっていけたのにな。もう終わりだ」
「そんな……」
「とにかくもう顔も見たくない。出ていけ」
「そんなこと言ったって、どこに行けば…」
「そんなこと知るか。行くところがないなら本当に風俗にでも売り飛ばしてやるぞ」
弘斗の剣幕に理緒(家村)は這う這うの体で出て行った。



理緒(家村)を追い出すと、何となくすっきりした。
しかしそれも最初の数日のことだった。
しばらくすると、理緒(家村)がいなくなったことが弘斗の生活に大きな影を落とすことになった。
どんなことに関してもやる気が起きないのだ。
部屋を片付けることなどせず、部屋は荒れ放題だった。
もちろん仕事をする気も起きず、会社に行ってもただ席に座っている毎日だった。
そんな状況でも高本の頑張りで部署の体面だけは何とか保っていた。

その一方、女になった由貴は、女になったことで順調に営業成績を伸ばしていた。
その結果、入社して3年目に課長に昇格した。
異例のスピード出世だ。
由貴個人の実力はもちろんあったが、管理職に女性を抜擢することで、女性を重用していることを社会にアピールできるという会社の思惑にしたがったものだった。
とにかく同期でトップを走っていたはずの弘斗はすでに脱落者になり果てていた。


「福山くん、そんなとこで腐ってないで仕事くらいしたら?」
いつものように席に座ってボォーッとしていると由貴が声をかけてきた。
「何だ、由貴か。お前みたいな優秀なやつが僕になんかにかかわらないほうがいいぞ」
「久しぶりね、由貴って呼ばれるのって。でも今は安希子よ。そんな名前で呼ばないで」
「そうだった、佐藤さんだったな」
「佐藤さんなんて他人行儀な呼び方じゃなくてアキって呼んで」
「それでそのアキさんが出来の悪い僕に何か用か?」
「最近、福山くん、おかしいわよ」
「そうか?何とか元気にしてるぜ」
「とてもそうは見えないけど。何だったら元気づけに私が相手をしてあげてもいいわよ」
「いいよ、別に」
「照れなくてもいいわよ。昔は仲良くしてたじゃない」
結局由貴に押し切られた形で、就業後二人でホテルに行った。

部屋に入ると、すぐに服を脱ぎ去り、ベッドの上で抱き合った。
「どうしたの?こっちは全然元気ないわよ」
由貴が弘斗の軟らかいペニスを手の中で遊んでいた。
「元気にしてあげよっか」
由貴が弘斗のペニスを銜えた。
由貴のフェラチオは気持ち良かった。
以前よりもかなり経験を積んだのだろう。
少しずつだが弘斗のペニスが硬くなってきた。
「これくらいでどうかしら」
ある程度硬くなったため、由貴がフェラチオをやめた。
そして自分の膣口を宛てがおうとした。
しかし、弘斗のペニスはすでに軟らかくなっていた。
やはり不能だ。
「どうして?あのときはあんなに激しかったのに」
「どういうわけか理緒しか抱けなくなったみたいだ」
「男として不能になったんだったら、いっそのこと女の子になっちゃえばいいのに…」
「何を!」と言いそうになったが、言われても仕方がないと思い返した。
由貴は火照った身体を慰めるべく、弘斗がそばにいるにもかかわらずオナニーに励んでいた。
弘斗は服を着て、一人先に部屋を出た。

ずっと由貴の声が頭に響いていた。
女の子になっちゃえばいいのに…。
なっちゃえばいいのに…。
なっちゃえばいいのに…。
なっちゃえばいいのに…。

部屋に帰ると、弘斗は半ば自棄(ヤケ)で薬を飲んだ。



「今日からこの姿で働きます」
次の日の朝一番、人事の田坂のところに顔を出した。
もちろん女性スーツを着ていた。
「誰だ、君は?」
「分かりませんか?」
弘斗はニコッと笑った。
田坂はすぐには分からないようだった。
しかし少しすると呟いた。
「福山くんか?」
「やっと分かってくれましたか?」
「あの薬を飲んだのか?」
田坂が声のトーンを落として尋ねた。
「はい、でも性同一性障害として扱ってもらえばいいですよ。私もそういうことにしておきますので」
「しかし…」
「もう何人もの社員にばれてますから今さらなかったことにはできませんよ」
戸惑う田坂を置いて、弘斗は自分の部署に向かった。

「高本くん、おはよう」
弘斗はすでに出社していた高本に声をかけた。
高本はキョトンとした表情をしていた。
「どちら様ですか?」
弘斗が自分の席に座ると、誰か分かったようだ。
「福山さん…ですか?」
「そうよ」
「どうしてそんな恰好してるんですか?」
「私、男でいることに疲れちゃったの。元々女性になりたいって願望があったし」
「そうなんですか?」
「女装っぽくないでしょ?」
「ぁ…はい、普通に女の人に見えます。それに声も女の人の声だし」
「でしょ?昔から着てるから自然なの。今日からこの姿で働くことにしたからよろしくね」
「ぁ…はい…こちらこそ」

二人だけの部署で、その上司が急に女の恰好をして出社したのだ。
高本が落ち着かないのも無理はなかった。
頻繁に弘斗のほうをチラチラと見ていた。
仕事には全然集中できないようだった。

終業の時間を迎えた。
弘斗は高本を飲みに誘った。
「今日から生まれ変わった私のお祝いということで、一緒に飲みに行かない?」
「いや、まだ仕事が…」
「明日できることは今日しない、ってことが私のモットーなの。さ、行きましょ」
弘斗は半ば強引に高本を連れ出した。

「今日一日福山さんを見てましたが、普通の女性みたいでしたよ」
酔いが回ってくると高本が饒舌になってきた。
「そう?そう言ってもらえると嬉しいわ」
「それにしても胸とかどうしてるんですか?」
「見たい?」
「はい、ぜひ」
「それじゃ下も見る」
「いえ、さすがにそこまでは…」
弘斗は高本の手をとって、自分の股間にあてがった。
「どう?」
「…何もないです……」
「でしょ?」
「どうなってるんですか?」
高本はマジで驚いた顔をしていた。

「それじゃ自分の目で確かめる?」
「えっ?」
「今からホテルに行きましょ」
弘斗は強引に高本を引っ張っていった。



ホテルに入ると、高本に抱きつきキスをした。
高本はそういう状況を考えていなかったのだろう。
驚いて弘斗を突き飛ばした。
「何するの、痛いじゃない」
「す、すいません。急なことで驚いてしまって」
弘斗は高本の首に腕を回した。
「高本くん、キスは初めて?」
「いえ、初めてじゃないです」
「ならもっと応えてよ」
「そんなこと言ったって、男同士ですし…」
高本の言葉に弘斗は笑みを浮かべた。
「それじゃ見てて」

弘斗は思わせぶりにゆっくりと服を脱いでいった。
高本は視線を全く外すことなく凝視していた。
ついに弘斗は一糸纏わぬ姿になった。
当然高本の目に映ったのは女性の裸体だった。

「福山さんって元から女性だったんですか?」
高本は瞬きすることすら忘れたかのように弘斗を凝視した。
酔いは一気に冷めたみたいだった。
「昨日までは普通の男性だったわよ、でしょ?」
弘斗は胸を強調するように胸を突き出した。
「確かに。ならどうして?」
「世の中、高本くんの知らないことがたくさんあるってこと。ところで高本くんって女性との経験はあるの?」
「いや、初めてです」
「それじゃ高本くんの知らない女の身体を知らなくちゃね」

弘斗は再びキスをした。
今度は高本は抵抗しなかった。
抵抗しないどころか積極的に舌を入れて来た。
弘斗もそれを受け入れた。
長いキスだった。
二人の舌が絡み合った長い長いキスだった。

弘斗は高本の股間に手を当てた。
そして高本とのキスを中断した。
「何だ、もうカチカチになってるじゃない」
弘斗は高本の前に跪いた。
ズボンをずらして、ペニスを取り出した。
高本の表情を上目遣いに見ながら、フェラチオを始めた。
「うっ」という呻き声がしたかと思うと、口の中に苦い物が広がった。
高本が射精したのだ。
フェラチオを始めて3秒ともたなかった。

弘斗は口に出された物をティシュに吐き出した。
「高本くん、いくら何でも早すぎるわよ」
「す…すみません……」
「でもこんなことされるのって初めてだから仕方ないかもね。それに若いから、すぐに復活できるわよね」
弘斗は高本をベッドに寝かせ、服を一枚ずつ脱がせた。
「意外と筋肉質なのね」
「はい、ブヨブヨの身体にはなりたくないので、ジムに通ってるんです」
「いい心がけね」
弘斗は高本の身体に舌を這わせた。
「福山さん、僕が…」
そう言って、高本が体位を入れ替えて、高本が上から覆い被さる形になった。
「正常位のほうが好きなの?」
高本はそれには答えず、弘斗の乳房を握った。
「痛いっ」
「す…すいません」
「もっと優しく…ね」
高本は極端に弱い力で触れてきた。
最初は物足りない気がしたが、気がつくと喘ぎ声を出していた。
気持ちいい。

「来て」
弘斗は高本のペニスを持ち、自分の膣に導いた。
「そう…そこ……ぁ……あああ………」
高本の抽送は激しかった。
荒々しく不器用っぽいところになぜか好感を持った。
抽送の時間は短かくすぐに果ててしまったが、十分に感じることができた。
高本ならパートナーに相応しいように思えた。

「福山さん、本当に女性になったんですね」
弘斗は高本の腕枕で横になっていた。
高本の手はずっと弘斗の乳房に触れていた。
「福山さんはやめて。もう他人じゃないんだから」
弘斗の言葉に高本が嬉しそうな表情を浮かべた。
「それじゃ何て呼べば?」
「弘美がいいわ」
「弘美…さん…」
「そう、それでいいわ、誠志くん」

二人は抱き合い、またキスをした。
そして第2ラウンドが始まった。



高本とは週に1〜2回交わった。
高本にとって初めての女性であるせいか高本は弘斗に夢中だった。
正確には弘斗の身体に夢中だけだったのかもしれない。
理由はどうあれ時間さえあれば弘斗の身体を求めてきた。
弘斗もそんな高本とのセックスを楽しんでいた。

女になって1ヶ月が過ぎた日曜の夜、初めての生理を迎えた。
念のために準備しておいた生理用ショーツにナプキンをつけた。
ゴワゴワしてあまり良い穿き心地ではなかった。
それよりもお腹が痛く、腰が重い感じがつらかった。
弘斗は横になることにした。
それにしてもこんな状態では会社に行く気すら起きないだろう。
自然と明日は休もうかと考えていた。
しかし考えてみれば会社の女性陣で生理休暇を取っている者を知らない。
きっと生理であることを隠すために無理して出勤しているのだろう。
(女って大変だ)
弘斗が女になったのは、強いセックスの快感を求めただけだった。
しかし生理を経験して初めて女の大変さを知った。
生理痛から逃げたいこともあり、男に戻るため薬を飲んだ。
しかし薬は効かなくなっていた。
元に戻らないのだ。
(生理になったせいなのかな)
そう思ったが、よく分からない。
それでも何となく生理を迎えたせいだと思った。
とにかくこれで本当に男に戻る道が閉ざされた。
それだけは確かなことだった。
確かに女として生きていこうと決心はしていた。
しかし改めて元に戻れない事実を突きつけられたわけだ。
弘斗はかなり精神的にショックを受けた。
眠れない夜だった。
しかし外が明るくなるころには、このまま女であることを受け入れる覚悟ができたような気がした。

次の日、やはり風邪ということにし、会社を休むことにした。
性同一性障害の自分が生理休暇など申請できるわけがない。
だから風邪というほうが無難だと思ったのだ。

一日横になっているとかなり楽になった。
これから生理があっても、始まってしばらくの時間を何とかやり過ごせば無駄に休まずにすみそうだ。
それにしても生理があるということは妊娠する可能性があるということだ。
これからは闇雲にセックスをしていてはいけない。
妊娠に注意しなければならなくなったのだ。
しかし性転換したと思われているため、高本がコンドームをつけてくれるわけがない。
弘斗はピルを飲むことにした。

生理がまだ終わらないのに、若い高本は弘斗の身体を求めた。
生理だということもできずに仕事が溜まっているからとか疲れているとか言って、のらりくらりと高本を交わした。
始まって5日ほどでようやく生理が終わった。

生理が終わると、すぐに高本に抱かれた。
これまでとどことなく感じ方が変わったような気がする。
生理を経験したため、女性になった意識が高まったせいなのかもしれない。
実際は何も変わっていないのかもしれない。
いずれにせよ弘斗は確実に女になっていった。


生理を経験した直後は妊娠を恐れてピルを飲んでいた。
しかし次第に面倒になって飲まなくなっていった。
そうなると次に現れる結果は明らかだった。


それから9ヶ月ほどして妊娠に気づいた。
それまで規則正しくやってきた生理がなかなか来なかったのだ。
ようやく生理というものに慣れてきて、何とかやり過ごすことを覚えたという頃になって、だ。
このときになって、ようやくピルを飲んでいないことを思い出した。
そのことと妊娠というものがすぐに結びついた。
だからすぐに妊娠検査薬を買ってきた。
調べると予想通り陽性反応が出たというわけだ。

「誠志くん、できちゃったみたい」
「からかわないでくださいよ。妊娠なんかするわけがないでしょ」
「それが本当なんだから驚くでしょ?」
「そりゃ弘美さんが妊娠したら驚きますけど…。元男性でしょ?」
「医学の進歩はすごいのよ」
「はあ、そんなもんなんですかね」
「自分の目で見ないと信用できないだろうから、とにかく一緒に産婦人科に来て」

弘斗は強引に高本を産婦人科に同行させた。
「ご主人ですか?」
「はあ」
「奥さんは妊娠3ヶ月です。ほら、ここが頭で…」
医者の言葉に真面目に相槌を打っていた。

「本当に妊娠してるんですね」
産婦人科を出るとすぐに高本が口を開いた。
「そうよ、誠志くんがパパよ」
「パパ?僕が?実感でないですね」
「実感なくったって、責任はちゃんと取ってくれるんでしょうね?」
「責任って何ですか?」
「私を未婚の母にするつもり?」
「いや、それは…」
「それは?」
「そんなこと絶対しません。弘美さん、僕と結婚してください」
「はい、喜んで」
無理矢理高本からプロポーズを引き出した。
弘斗は最高に幸せな気持ちになれた。
一方、高本の表情は少し強張っていた。

弘斗の性の変更の申し立ては妊娠のおかげで比較的に簡単に認められた。
名前も弘斗から弘美に変えた。

戸籍が女性になると、すぐに婚姻届を提出した。
弘斗は高本弘美になった。

お腹の膨らみが目立ち始めたころ、高本との結婚式が行われた。
仲間内だけの簡単なものだった。
それでもウェディングドレスを着たとき不本意にも涙がこぼれた。
ウェディングドレスに思い入れなんてないと思っていた。
それでもウェディングドレスに身を包まれたとき、心の中に温かいものが占めた。
そして一粒の涙が大量の涙を誘発した。
「そんなに泣いたらお化粧が崩れますよ」
ホテルのメークアップ担当者が困ったような顔をしていた。
それでも感情が高ぶって涙を止めることができなかった。

結婚を機に後任として高本を推薦し、他部署への異動を申し出た。
商品企画課は高本に任せても大丈夫だろうという思惑はあったが、妻が上司であることに夫としてストレスになると思ったからだった。
会社としても夫婦が同じ部署(しかも二人きり)にいることは好ましくないと考え、どちらかに異動を打診しようとしていたらしい。
弘斗からの申し出はまさに渡りに舟だった。

移動先は経理部だった。
そこにはまだ大川がいた。
正確には女になった当時は野末里香と名乗っていて、今は松川里香となった女性がいた。
大川もそのまま女性として生きることを選び、財務課の松川課長と結婚したのだ。
大川は同じような道を歩んでいる弘斗に心を許したのか自分の正体を明かした。
「知ってたわよ」
「ええ、嘘っ。絶対にばれてないと思ってたのに。もしかして皆知ってるの?」
「そんなことないと思うわ。私と営業の佐藤さん、くらいかな?」
「佐藤さん?どうしてあの人が?」
「彼女、前の名前を南野由貴って言うの」
「嘘っ、あの南野が佐藤さんだなんて…。全然知らなかった」
「今度3人で飲みに行きましょうよ」
弘斗たち3人はこれからも良い友達でいられそうだった。


しばらくして、弘斗は女の子を産んだ。
そして長女が2歳になるころに、もう一人の子供をお腹に宿した。
そのタイミングで会社を辞めることを決意した。
子供たちが幼い間は一緒の時間を持ちたいと考えたからだった。

「やっぱりあのとき女性になる決心をしてよかった」
弘斗は妻として、母として、そして女として充実した毎日を送れるようになったことに心から感謝していた。


《完》

次の作品へ | top | 前の作品へ
inserted by 2nt system