人生第二幕
「何だ、この手は。儂を絞め殺すつもりか」
「そうよ、こんなジジイにされて生きていけるわけないじゃない」
「それじゃやってみろよ。そんな身体でできるんならな」
「言われなくてもやるわよ…、えっ、身体に力…が…入ら…ない………」
元の儂の身体が目の前で崩れ落ちた。
儂の身体が病魔に侵されていると分かったのが、約1年前。
健康体から臓器移植すべく、金にものを言わせて秘密裏にドナーを探した。
そして見つけたのがこの高橋梢枝だった。
儂は高橋梢枝の写真を見て一目惚れした。
臓器をもらうだけでなく、儂がこの女自身になりたいと思ったのだ。
女になりたいなんて考えたこともなかったこの儂がだ。
そして様々な罠を仕掛けて、身体を奪った。
代わりに腐りかけの身体を梢枝にくれてやった。
お礼に儂の財産のほぼすべてをつけて。
念のため睡眠剤を打っておいてよかった。
さすがに女の力じゃ太刀打ちできなかっただろうからな。
あとは死ぬまで病院に閉じ込めておくだけだ。
そうすれば財産はまた儂のところに戻ってくる。
これまでの経験と頭脳。
そして手に入れた若さと美貌。
儂の新たな人生の幕開けだ。
《完》