幼馴染み



永嶋絵梨は高校2年生。
絵梨には藤堂真治という幼馴染みがいる。
家は隣同士。
家族同士の付き合いである。
幼い頃は異性として意識したことなんてなかった。
単なるおともだち。
しかし思春期の訪れとともに二人の関係は微妙に変わってしまうことになる。
絵梨は中学卒業近くになって、真治に対して以前とは違う意識が自分の中に芽生えつつあることに気づいた。
すなわち真治をひとりの男性として意識し始めていたのだ。
そんなふうに意識し出してから、真治に対して恋心を抱いている自分に気がつくまでの時間は大してかからなかった。
一方、真治にはそんな気はないように思えた。
自分のことを異性だとまったく思ってくれてないことに絵梨は苛立ちを覚えた。
仲は良いが、幼馴染み以上になれない。
これだけ近い存在になるとなかなか異性であることを意識してもらえないのだろう。
真治にも自分を異性として見て欲しい。
いっそのこと自分の思いを真治にぶつけてみようか。
でもそのことでふたりの距離が離れる可能性がないわけではない。
今のまま永遠の仲良しでいるほうがいいのではないか。
そう思うと、波風立てずに今のままいるほうがいいのかもしれない。
考える度に行き着く結論は違った。
そんな自分に対して絵梨はもどかしさを感じていた。

ある日、授業が終わってから、絵梨はいつものように駅前の商店街をブラブラしていた。
すると、いつもなら決して覗くことのない疲れた感じの店が目にとまった。
絵梨は何かに取り憑かれたかのようにその店の中に入った。
すぐに少し古ぼけた男の子と女の子の可愛らしい人形を見つけた。
何となくその人形に心を惹かれるものを感じるのだ。
「お嬢さん、その人形が気に入ったのかい?」
突然背後から声をかけられた。
驚いて絵梨が振り返ると、奥の方に店の主人と思われる老人がチョコンと座っていた。
「ええ、何となくこの子たちに呼ばれたような気がして」
「そうかいそうかい。きっとお嬢さんには気になる男の子がいて、なかなか気持ちを確かめられなくって悩んでるんじゃろう」
「そうですけど、どうしてそれが…」
絵梨は人形を手に、老人に近づいた。
「その人形はそういう人を見つけると、念を送ると言われているんじゃ」
「へぇ、そうなんだぁ」
「その人形の頭のところが開くようになっていて、その中に入っている薬みたいなのが入ってるんじゃ。女の子に入っている薬を女の子が、男の子に入っている薬を男の子が飲めば、二人はずっと一緒にいられるそうじゃ」
「そうなんですか?」
「昔からの言い伝えじゃから本当かどうかは分からんが、今も伝えられていることを考えると、おそらく少しくらいは効果があるんじゃないかな」
「へぇ、それでこれはいくらなんですか?」
「いつもは1000円で売ってるんじゃが、人形の方から声をかけてきたんじゃとすると、お金はもらえんな」
「そんな、それじゃ悪いです。1000円で買います」
絵梨は店の主人に1000円札を差し出した。
「ははは、なかなか優しい娘さんじゃ。それじゃ、半分の500円だけいただこうかな。ほい、これはお釣りじゃ」
店の主人は絵梨に1000円札を受け取って、500円玉を渡した。
「その人形の薬を使うかどうかはよく考えた方がいいぞ。万が一その男の子のことを嫌いになっても離れられなくなるかもしれんからな」
店の主人は茶目っ気たっぷりな笑顔を絵梨に向けて言った。
「ありがとう。よく考えて使うことにします」
絵梨は買った人形を鞄に入れて、店を出た。

それから何日か経ったある日のこと、その日もいつものように真治は絵梨の家に来ていた。
絵梨の部屋と真治の部屋は2階の真向かいで1メートルほどしか離れていない。
真治は玄関を省略して、窓越しにしょっちゅう絵梨の部屋に遊びに来る。
特に用があるわけでもなく、ゲーム目当てだったり、おやつ目当てだったり、暇つぶしだったりなのだが。
「真治、はい。ジュースとケーキ」
「おっ、サンキュー。ここに来ると、美味しい物が食えるからいいんだよな」
「あたしに会いに来たんじゃないの?」
「もちろん、綺麗な絵梨の顔も見えるし、『その上に』ってことじゃん。決まってるだろ?」
「もう。ホントかな?」
「俺が嘘を言うわけないじゃん。絵梨は綺麗で優しくってノートも写させてくれるし、大好きさ」
「真治ったらホントに調子いいんだから」
真治は出されたケーキとジュースを一気に片付けた。
それを見ながら絵梨はゆっくりとジュースを飲んだ。
「あれっ、今日は絵梨、ケーキ食べないのかよ?」
「女の子はいろいろと大変なのよ」
「ってことは太ってきたとか?」
「失礼ね。でもそうならないように気をつけてるのは確かだけど。ところで、真治、今日のジュース、なんか変じゃなかった?」
「底の方がちょっと苦かったけど、何か変なモン入れたのか?」
「へへへ、何かよく分からないけど、真治とあたしがずっと仲良しでいれるおまじない」
「俺は絵梨のこと、好きだって言ってるじゃん」
「そうじゃなくって、女の子として好きになって欲しいだもん。だって真治って幼馴染みって感じでしかあたしに話してくれないし」
「そんなことないよ。俺だって絵梨のこと好きだよ。でも今さら好きっていうのも照れ臭いし、どんなふうに言っていいのか分かんないし、なら今まで通りでいいかなって感じでさ…」
「真治もあたしのことを好きだって思ってくれてたの?」
「うん」
絵梨は真治の胸に顔を埋めた。
やがて真治の息が荒くなってきたのを感じた。
絵梨も自分の股間が湿ってきたのを感じた。
「絵梨、何か俺、身体が熱くなってきた」
「あたしも何か変」
「もしかしたらさっきのおまじないって誘淫剤みたいなもんだったんじゃないか?」
「えっ、そうなのかな。そんなの分かんないけど…」
「絵梨、俺、今すぐ絵梨が欲しい」
「あたしも真治に抱かれたい…ねぇ、抱いて…」
二人は沸きあがってくる欲望を抑えることはできなかった。
真治と絵梨は全裸になった。
絵梨はベッドに横になり、真治を待った。
真治のペニスは雄々しく大きくなっていた。
絵梨の股間は自分で出した愛液でグチョグチョに濡れていた。
今の真治には前戯などといった悠長なことは面倒だった。
真治はともかくペニスを絵梨の中にぶち込みたかった。

真治は自分のペニスを絵梨の股間にあてたが、なかなかその場所が分からなかった。
「絵梨、どこに入れたら良いんだ?」
絵梨は黙って、恐るおそる真治のペニスを手に取り、自分の膣口にあてた。
「来て」
絵梨は真治を促した。
真治のモノがゆっくりと絵梨の中に入ってきた。
「痛いっ!」
「大丈夫?」
「……うん、ちょっとだけ。でも大丈夫…」
「全部、入れちゃっていいか?」
「うん、いいわ」
真治はペニスを絵梨の中に根元まで入れた。
絵梨の襞が真治のペニスを刺激してきた。
膣が収縮して真治のペニスを締め付けてきた。
真治はすぐにでも爆発しそうだったが、じっとして自らに落ち着くように言い聞かせた。
「真治……」
「ん?」
「ありがとう」
「何だよ、いきなり」
「こんなあたしのこと好きになってくれて」
「何言ってんだよ。絵梨って可愛くって明るくって男子の中じゃ結構人気なんだぜ。俺の方こそ絵梨とこんなふうになれてすっごく嬉しいよ」
「本当に?」
「もちろん!」
真治と絵梨は性器が繋がったまま、キスをした。
お互い生まれて初めてのキス、いわゆるファーストキスだった。
「キスの方がセックスより後になっちまったな」
真治は照れ臭そうに言った。
「でも、あたし、嬉しい」
「…そろそろ動いていいかな?」
「うん、痛いかもしれないから、ゆっくり動いてね」
真治はゆっくりと腰を動かし出した。
絵梨には思った以上に痛みはなかった。
軽い痛みの中に、少しずつ快感を感じていた。
最初は唇をかんで声を出さないようにしていた絵梨だが、襲ってくる快感に少しずつ喘ぎ声を出し始めていた。
「ん…ん…ん…ぁん…ぁ…あん…あん…あんあん…あんあんあん…」
真治はすぐにでも爆発しそうだった。
あんまり早く出してしまってはいけないと思い、真治は動きながらもセックスと関係のないことを考えながら、時間を稼いでいたが、そろそろ限界だった。
「真治ー、早く……来て……」
「絵梨、出すぞぉぉーー」
真治は絵梨の中で精液をぶちまけた。
その瞬間、頭の中が真っ白になった。


真治は徐々に落ち着きを取り戻した。
ようやく周りの状況が目に映ってきた。
不思議なことになぜか股間に異物が挿入されている感触があるのだ。
またさっきまで自分の方が上になっていたはずなのに、今は下になっていた。
いつの間にか下になって、絵梨の全体重を全身で感じていたのだ。
「おい、絵梨、重いぞ」
真治はそう声をかけ、身体をずらした。
そのとき真治の股間から何かが抜けた。
「ぁんっ…」
真治は思わず声を出してしまった。
(何だ、今の?それに今の俺の声って女みたいだったし…)
真治は嫌な予感がし、上に圧し掛かっている身体をずらし、上半身を起こした。
プルンッ♪
起こしたときに胸の揺れを感じた。
胸には小さくない膨らみがあった。
乳房だった。
隣で気持ち良さそうに横になっている奴は…真治自身だった。
もう疑いようがなかった。
(俺は絵梨になってる)
真治は隣の男を揺り起こした。
「おいっ、起きろって」
「うっ、うーん……」
男はようやく気がついたようだった。
「真治、愛してる……」
男は甘えたようにそう言って、寝返りをうつように真治の方を向いて腕を絡ませてきた。
「何言ってんだよ。それどころじゃないって」
真治は男の頬を軽く叩いた。
「痛いわね。何するのよ!」
男はガバッと上半身を起こした。
そして真治の方を見て言葉を失った。
「…嘘……」
「絵梨、なのか?」
「真治、なの?」
「どうしてこんなことになったんだ?」
「分からないわよ」
「お前が飲ませた薬のせいじゃないか。もう何てことしたんだよ。俺は女になんかなりたくねえぞ」」
「あたしだって男になりたいわけないじゃない」
真治になった絵梨はおかまみたいで気持ち悪かった。
「これからどうしようか?」
「どうしようかって言われても分かんないわよ」
「もしかしたらセックスのせいかな?セックスしたから入れ替わったとか」
「そうしたらもう一回やれば戻れるかもしれないってこと?」
「確信はないけど、その可能性はあるかも」
「じゃあもう一回やってみましょうよ」
真治になった絵梨は急に元気になった。
「でも今出したばっかりで、そんなにすぐに元気になるかな」
「何言ってるの。あたしは元気よ」
「お前じゃなくって、それだよ」
絵梨になった真治は絵梨の股間を指差した。
そこにはダラリと下がったペニスがあった。
「俺、そんなにセックスが強いとは思えないし、そんなにすぐには難しいんじゃないかな?」
「何言ってるの?二人の一生がかかってるのよ。頑張りましょうよ」
「頑張るのはお前なんだけど…。それ、元気にできるのかよ」
「えぇ、急にそんなこと言われても。男の子の身体なんて分かんないわよ」
「仕方ねえな」
絵梨になった真治はその手で元の自分のペニスを握った。
絵梨の愛液と自分自身の精液が乾いてパリパリになっていた。
ペニスを手に取り、その先を指で触れた。
そして優しく先を擦るように指を動かした。
少しずつ硬度が増してきた。
少し大きくなったところで、竿の部分を握り、ゆっくり上下運動をしてやると、ようやく勃起した。
「これで大丈夫だろう。それじゃやろうか」
絵梨になった真治はベッドに横になった。
真治になった絵梨の手が絵梨になった真治の股間に伸びてきた。
「あんっ」
「真治ったら艶っぽい声出すのね」
「お前がそんなとこ触るからだろ」
「女の子の身体はデリケートなんだから、そんな状態でやると大事なところに傷がついちゃうわよ」
「えっ、どういう意味?」
「大事なところが全然濡れてないじゃない。濡れてなきゃ、男性をスムーズに受け入れられないのよ」
「そんなこと言われても…」
「分かってるわよ。あたしがちゃんと準備してあげるから」
真治になった絵梨は乳首に触るか触らないかくらいの感じで乳房を愛撫し出した。
そして、舌の先で乳首を舐めた。
「あ…あ……気持ちいい…」
真治になった絵梨は思わず声を出してしまった。
「真治って可愛い声で啼くのね、あたし、何かレズってるみたいな気になってきちゃった」
真治は何分間か乳房を愛撫されると股間に湿ってきたのを感じた。
そのタイミングで絵梨の手が股間の割れ目に滑り込んできた。
絵梨は湿り気を指につけてから、クリトリスに触れた。
「んっ…」
絵梨は優しく小さな突起物をこすった。
しばらくすると、どんどん股間が濡れてきた。
「真治の方も準備ができたようね。じゃあ行くわよ」
絵梨はペニスを真治の女性の部分に挿入してきた。
「痛い」
「まだ2度目だもんね。あたしが動くと初めのうちは痛いかもしれないけど、そのうち気持ちよくなると思うから、少しの間我慢してね」
絵梨はそう言うとゆっくりと動き出した。
少しの痛みはあったが、快感の方が圧倒的に強かった。
真治は快感に溺れていた。
(女ってすっごい気持ちいい)
真治は声を抑えようと必死になっていた。
「ん…ん…ん…ん…ん…ん…ん…ん………」
真治は何度か意識が飛んだ。
しかし、絵梨はなかなかフィニッシュに行けないようだった。
「早く…早く…出してくれ…。おかし…く……なりそう……」
真治はたまらず言った。
実際真治は何も考えられない状態になっていた。
長い長い時間、絵梨の動きは続いた。
やがて諦めたように絵梨は動きを止めた。
「やっぱりダメみたい」
「お…俺も…もうダメ……。絵梨の身体って…感じやすすぎる…」
真治は快感で気を失うように眠りに落ちていった。
やがて可愛い寝息を立てて寝始めた。
絵梨も慣れない男の身体でセックスに励んだせいで、疲れていた。
二人して仲良く寝入ってしまった。

気がつくと晩御飯の時間になっていた。
下から絵梨の母親の「ごはんよー」という声で二人は目を覚ました。
「絵梨、おばさんが呼んでるぞ」
「今は真治が絵梨なんだから、真治が答えてよ」
「そっか、仕方ねえな。はーい、今行くー」
「しばらくは入れ替わったままでいるしかないわね。あたしは真治として真治の部屋に戻るわね」
「じゃ俺は絵梨として絵梨の振りしてこの家にいるしかねえんだな」
二人は服を着ようと立ち上がった。
「当然服も入れ替えるしかないか」
真治は絵梨の脱いだショーツを手に取った。
くしゃくしゃに丸まっていて手のひらに収まるくらい小さなものだった。
(こんなのを穿くのかよ)
真治はショーツを穿こうと脚を上げた。
「あっ」
そのとき自分の中からどろっとした物が流れ出てきたのを感じた。
元の自分の精液だった。
ティシュを何枚か取って、出てきた物を拭った。
ティシュを見ると、精液とともに絵梨の初体験を示す血がついていた。
さらに二度ティシュで股間を拭き取りショーツを穿いた。
小さなショーツはピタッと絵梨の股間にフィットした。
真治はちょっと感動していた。
ブラジャーが問題だった。
膨らみをカップに入れて、後ろ手にフォックを留めようとするのだが、なかなかうまくひっかからなかった。
「馬鹿ね、ブラジャーはこうやるのよ」
絵梨は後ろからブラジャーの留め方を教えてくれた。
まず、胸のところで裏向けにフォックを留める。
それを半周させてカップの部分を前にやる。
そうして、ストラップをかけて、乳房をカップに納めてやるのだ。
そうすると楽にブラジャーをつけれるということだった。
「へぇー、ブラジャーってこういうふうにつけるんだ、全然知らなかった」
「男の子って背中で留めるっていうイメージ持ってるみたいだもんね」
真治はキャミソールとショートパンツを穿いた。

絵梨はボクサーパンツを穿いてから、ペニスをどう納めていいのか迷っていた。
「ねえ真治、これってどうしておいたらいいの?」
「適当でいいんだよ、適当で」
「適当って言っても何となく納まりが悪いんだもん」
「なれりゃ大丈夫だって、そんなもん」
絵梨はタンクトップに短パンを穿いた。

「それじゃ、あたしは1回、真治の部屋に戻るわね。くれぐれもしっかりあたしをやってよ」
「お前こそ」
「真治ったら今はあたしなんだからそんな乱暴な言葉遣いしないでね」
「お前こそおかまみたいな喋り方するなよ」
「分かってるわよ…じゃなくて分かったぜ」
「何か無理があるようだけど、まあいっか」
「真治、あなたもちゃんと話してよ…話せよ」
「分かった、分かった…わよ」
真治になった絵梨は窓越しに真治の部屋に戻っていった。

真治は階下に降りていった。
「絵梨。あんたは女の子なんだから、食事の準備くらい手伝ってよ」
「はーい」
(やっぱ女って邪魔くせえな)
真治は心の中でつぶやいた。
「ほら、これ、テーブルに持って行って」
絵梨の母は娘使いが荒い。次から次へ用事を言いつけてくる。
「じゃあ、直之、呼んでくれる?」
直之は絵梨の小5になる弟だ。
「直之、ごはんよ」
「うん、今行く」
絵梨の父の帰りは遅い。母子3人の食事が始まった。
絵梨の母の料理はうまい。
真治になった絵梨は鶏の唐揚げをいつものペースでバクバク食べていた。
「お母さん、お代わり」
「姉ちゃん、すっげえ」
直之は自分の食事も取らずに、絵梨になった真治を見ていた。
「どうしたの、あんた?いつもは太るからあんまり食べないって言ってるのに」
真治の母親も驚いていた。
「姉ちゃん、真治に振られたんでやけ食いしてるんだろ?」
「何、生意気言ってんだよ…言ってるのよ」
「言ってんだよだって、こっえー」
直之は面白がって言った。
食事が終わってからも後片付けを手伝わされた。

絵梨はすぐに階下の台所に行った。
真治の母が夕食の支度をしているところだった。
「母さん、腹減った」
絵梨はいつもの真治の口調を真似して言った。
「ちょっと待ってよ。今支度してるんだから。テレビでも見ていて」
「はーい」
(やっぱり男だとお手伝いしろって言われないのね)
絵梨はリビングに行き、テレビをつけた。
この時間はどこもニュースばかりだ。
つまらないのでテレビを消して新聞を読んでいた。
暗いテレビの画面に映った自分の姿を見た。
高校生の男が膝を揃えて新聞を読んでいる姿だった。
(おかまっぽいかも)
絵梨はわざとらしく股を広げてみた。
(何か違和感があるけど、こういうふうにしなくちゃね)
そんなことを考えてると、真治の母が呼ぶ声が聞こえた。
「真ちゃん、ごはんよ」
「はーい」
絵梨はいつものようにご飯を一膳でやめた。
「どうしたの、調子でも悪いの?」
(あっそうか、真治が一膳で終わるわけないもんね)
「午後からあんまり身体を動かしてないせいかあんま腹減ってねえんだ」
「そう?ならいいけど」
真治の母は不思議そうな顔をしながらも、それ以上突っ込んでこなかった。

真治は風呂に入っていた。
(俺が絵梨になるなんてな。ちゃんと元に戻れたらいいんだけど)
真治は自分の身体を触った。
(それにしても絵梨の肌ってすごくスベスベしてるよな)
真治は湯船を出て、ボディソープを身体につけ、シャンプーで髪を洗った。そうしてシャワーで泡を洗い落とした。
(何かシャワーが当たる感じも男とちがうな)
絵梨の身体は水をはじくようだった。
(大事なところも綺麗にしとかないと)
真治は野球のキャッチャーのように座り、下から強めのシャワーの水を当てた。
(何か気持ちいいぞ)
真治はシャワーを小刻みに動かし、シャワーの水に強弱をつけて、股間に水をぶつけた。
(あっ……ちょっと気持ちいい……)
しばらくそんなことをしていたが、やがて身体に寒気を覚えたので、再度湯船に入った。
風呂から出て、ショーツとパジャマの上下を着て、頭を拭きながら部屋に戻った。


日曜になった。

絵梨は朝起きて股間の力強さに驚いた。
(朝から元気ね。これが朝立ちってやつなのね)
絵梨はどう処理していいか分からずペニスを触っていた。
やがて握って擦ると気持ちが良いことを知った。
何となくこの行為を続けていると、やがて出そうになってくることを感じた。
擦るスピードを速くしていくと、ピュピュッと白い液体が飛んで布団やパジャマについた。
(やだ、あたし、真治の身体でひとりエッチしちゃったんだ)

絵梨は精液がついたペニスが気持ち悪く、朝からシャワーを浴びた。
「どうしたの?朝からシャワーなんて」
絵梨が風呂場から出て行くときに真治の母親に咎められた。
「い、いや、寝てる間に汗がひどくって」
「でも、アンタ、朝からシャワーなんて浴びたことがないじゃない?もしかしたら絵梨ちゃんとデートなの?」
「…うん、そう。今日は絵梨とデータするから、決めていこうかなって」
「へぇー、アンタと絵梨ちゃんがデートするなんてアンタ達もそんな年頃なんだね。道理で私も年取るはずね」
「何言ってんだよ」
「永島さんちに心配かけないようにあんまり遅くならないようにね」
「分かってるよ」
絵梨は真治の振りがなかなかうまくできたと自己満足を感じていた。
絵梨は自分の部屋に戻り、元の自分の部屋の窓を叩いた。

真治は窓を叩く音で目を覚ました。
まず最初に自分の身体を確認した。
元通りになっていることを期待したが、やはり絵梨のままだった。
しつこく叩かれている音に渋々窓を開けた。

「朝っぱらから何だよ?」
「こうなっちゃった原因が分かるかどうかは分かんないけど、不思議な薬を手に入れた店に行ってみない?」
「別にいいけど、だったら俺、絵梨の格好で外に出なきゃいけないのかよ?」
「そんな些細なこと何よ。あたしたちのこれからがかかってるのよ」
「分かったよ、一緒にいけばいいんだろ」
「じゃ、30分後に出てきてね」
「今からすぐでいいじゃん」
「何言ってんのよ。そんなグチャグチャな髪のまま女の子が外出できるわけないでしょ。ちゃんと綺麗にしてきてよ」
「そんなこと言っても、俺、どうしていいか分かんないし」
「そっか、あたしがやってあげないといけないわね。じゃあそっちに行くから、そこどいて」
絵梨は元の自分の部屋に飛び移った。
「今日はあたしがやってあげるけど、明日からは自分でちゃんとやってね」
「いや、明日は元に戻っていたい」
「そっか、それもそうね。万が一、そのままだったとしたら…ということで覚えておいてね」
「分かったよ」
真治はヘアミストとヘアフォームで髪の整え方をレクチャーされた。昨夜、頭を洗って、さっと拭いて眠ったこともばれて、入浴後の髪の手入れや肌の手入れについてもみっちり教え込まれた。おかげで1時間近くの時間が過ぎてしまった。
「じゃ、後は適当にパジャマを着替えて出てきてね」
絵梨は真治の部屋に戻っていった。
真治は女の格好で外に出ていくことは避けたかったが、仕方がない。
Tシャツにジーンズという無難な格好をした。
とてもスカートを穿く勇気は出なかった。

10時を過ぎたころに、二人で人形を買った店に行った。
店に入るとすぐに、店の老人が絵梨になった真治に声をかけた。
「おお、この前のお嬢さんじゃないか。どうじゃ、人形の薬は試してみたかい?」
「おじさん、実はその薬を飲んだら入れ替わっちゃって」
真治になった絵梨が言った。
「入れ替わったってどういうことじゃ?」
「あたしが彼になって、彼があたしになっちゃったんです」
「まさか薬を逆に飲んだんじゃないじゃろうな」
店の老人が考えながら言った。
「ええ!?多分間違ってないと思うけど、そんなにちゃんと確かめたわけじゃないから自信ない…」
「逆に飲むと入れ替わるという話は聞いたことはあるにはある」
「それであたしたちは元に戻れないんですか?」
「おそらくお嬢さんたちは交わった後に入れ替わったじゃろ?」
「ええ」
「話によると交わるたびに二人が入れ替わるらしい」
「ということは戻れるんですね?」
「戻れるが、さらに交わるとまた入れ替わる。入れ替わるのが嫌なら、元に戻ったら二度と交わらないことじゃ」
「そんな…せっかく真治の気持ちを確かめることができたのに」
真治になった絵梨は悲しそうな顔をした。
「逆に飲むと、効果も逆になる。それは仕方ないことなのじゃ」
「ごちゃごちゃうるせえな。元に戻れるならさっさとやろうぜ」
絵梨になった真治は絵梨の手をひっぱって店を出た。

店を出て、二人はそのままラブホテルに行った。
「真治、真治は自分に戻ったら、もうあたしを愛してくれないの?」
絵梨は大粒の涙をこぼしていた。
「何言ってんだよ。昨日も言ったけど、俺は絵梨のことが好きだ」
「でもセックスしたら入れ替わっちゃうんだよ。それでもいいの?」
「大好きな女の子になれるんだぜ?世の中にこんな幸せな男は他にいないだろ?」
「真治、それでもいいの?」
「お前こそ俺になってもいいのかよ」
「あたしは真治もあたしになった真治も両方好き」
「何だよ、それじゃナルシストじゃないか」
「えへっ」
絵梨と真治は強く抱き合った。
深い深い口づけを交わした。
真治になった絵梨は手際良く真治の服を脱がした。
全裸にされた真治は絵梨の前戯に翻弄されていた。
股間は洪水のように濡れていた。
絵梨は急いで服を脱ぎ捨てて全裸になった。
「真治、行くわよ」
「うん…」
絵梨のペニスが絵梨になった真治の身体を突き刺した。
「真治、痛い?」
「今日は大丈夫みたいだ」
「じゃ動くわよ」
「ああ」
絵梨が身体を動かした。
今日は余裕があるのか強弱をつけている。
真治はすぐに快感を感じていた。
「ああああ…絵梨…すごい……」
今日は自分の部屋ではないから思いっ切り声を出した。
「真治、そんな声出さないでよ」
絵梨は身体を動かしながら言った。
「ああ…いい……あん…あん…あん…あん…」
真治はわざと声を上げた。
絵梨は無視してさらに早く動いた。
「ああああ、絵梨……い…いく……」
「ああ、真治…」
絵梨のペニスから勢いよく白い粘液が出た。
絵梨になった真治もその瞬間絶頂を感じた。

やがて意識を取り戻した二人は無事に元に戻っていることを知った。
「真治、ごめんね。私が変な薬を飲ませたばっかりに」
「何言ってんだよ。おかげで絵梨がどれくらい感じるのかが分かったんだぜ。普通の男では経験できないことを経験できるんようになったんだから。絵梨に感謝しなきゃな」
「本当に?」
「本当。それに女の快感も嫌いじゃないしな」
「もう真治ったらエッチなんだから」
絵梨は可愛く頬を膨らませた。

「じゃあ、もう1ラウンドやろうか」
「ええ、また入れ替わったらどうするの?」
「大丈夫、大丈夫。俺が2回連続できないことは昨日絵梨が証明してくれたじゃないか」
真治は絵梨を抱きしめた。
すぐにペニスが大きくなってきた。絵梨は両手でペニスに触れてきた。
「もうこんなに大きくなってる」
「今日は元気なようだな」
真治は絵梨の胸に舌を這わせた。
乳首の先が絵梨の弱点だ。
そこを舐めると見せかけてじらすと絵梨の感じ方は強くなる。
真治は自分の経験でそれを知った。
忠実にそれを実行した。
絵梨は信じないくらい大きな喘ぎ声を上げている。
真治はペニスを絵梨の中に挿入した。
何の抵抗もなくスルリと入った。
(やっぱり攻める方がいいな)
真治は腰を縦横無尽に動かした。
やがて精液が出そうな感じが下半身から伝わってきた。
(やべっ!)
真治はそう思い、身体の動きを止めたが、次の瞬間……出てしまった。

気がつくと、真治は絵梨になっていた。
「もうせっかく戻ったのに真治ったら」
「だって絵梨の中ってすっごく気持ちいいんだもん」
「知ってるわよ」
真治になった絵梨は言ってから"しまった"という顔をした。
「俺たちお互いどこが感じるのか知ってるってことはすっげえ相性いいのかもな」
「へへへ、そうかも」
「もう1回できそう?」
「もう無理みたい」
「じゃあさ、これからデートして、夜にまたしよっか?元通りになれば、ちゃんと学校行けるだろ?」
「真治ったら、もう一回したいから、入れ替わったんじゃないの?」
「それもある」
「本当に男の子ってエッチなんだから」
「今はお前が男の子じゃん。とりあえず俺、シャワー浴びてくるな」
絵梨になった真治は浴室に行った。
絵梨はベッドに寝転んでペニスで遊んでいた。
(まだ一日だけど、これがあるのも何となくなれちゃったな)
とか考えていると、浴室から真治の呼ぶ声が聞こえてきた。
「絵梨ぃ、ちょっと来てくれ。大変だぁ」
絵梨が浴室に行くと、シャワーの水に赤いものが混じって流れているのが見えた。
「どうしたの?どこか切ったの?」
「違う、急にあそこから血が……」
「えぇっ、次の予定日まであと1週間くらいあるはずなのに……。真治、それ生理よ」
「生理!?俺が?」
「だって真治は今あたしなんだから生理だってなるわよ。初めてのセックスとかで周期が狂ったんだと思うわ」
「俺が生理……」
絵梨になった真治は呆然としていた。絵梨は顔を赤らめながらも、濡れた身体を拭きながら生理の対応をしてくれた。
「真治。生理は1週間くらい続くと思うけど、その間は清潔にしておくこと。もちろんエッチはダメよ。あと病気じゃないんだから普通通りの生活をすること。いいわね?」
「ええっ、じゃあ俺1週間は絵梨でいなくちゃいけないのか?」
「そう、仕方ないわね。1週間したら元に戻れるんだから1週間我慢してね」

月曜の朝、絵梨になった真治は目を覚ました。
また、元通りになっていることを期待したが、やはり絵梨のままだった。
お腹が鈍い痛みがあり、腰も何となく重い。
(そうか。俺、今、生理なんだな)
真治は憂鬱な気分になった。
ベッドから出てパジャマを脱いだ。
ブラジャーをつけ、壁にかかっているセーラー服を見て、さらに憂鬱な気分になった。
(こんなの着て行くのかよ)
白いハイソックスを穿き、スカートを穿いた。
セーラー服を着て、全身が映る鏡でチェックした。
鏡の中には見慣れた絵梨が映っていた。
しかし、今は真治が絵梨なのだ。
スカートは膝上5センチくらいある。
パンツが見えそうで心許ない。
真治は後ろ姿を鏡に映して、振り返りながらパンツは見えないことを確かめた。
そうして、ようやく真治は階下に降りた。
「おはよう、絵梨。…あれっ、今日は早く行くの?いつもだったら、パジャマで起きてくるのに」
「えっ、いや…、うん、そう今日はちょっと早めに行こうと思って」
「そうならそうと昨日のうちに言っておいてね。朝御飯は食べていくんでしょ?」
「うん、食べていく」
「じゃ、さっさと食べて。それから女の子なんだからそんなボサボサのままで外に行かないでね。ブラッシングくらいしなきゃ」
「分かってるわよ」
(昨日絵梨に教えてもらったことやらなきゃいけないんだったっけ?やっぱり女って面倒くせえ)
絵梨になった真治は相当うんざりしていた。

真治と絵梨は仕方なくお互い入れ替わった状態で学校に行った。
「おはよう、絵梨」
「美希、おはよう」
「ねえねえ、今日藤堂くんと一緒に学校に来たでしょ?」
絵梨と真治は幼馴染みで隣同士だったが、これまで一緒に登校したことがなかった。
しかし、入れ替わってしまったこともあり、二人であれやこれや作戦を練りながら登校したのだ。
それを美希に見られてしまったのだ。
「じゃあさ、とうとう藤堂くんに気持ちを受け明けたんだ」
「うん」
嘘じゃないよなと思いながら絵梨になった真治は答えた。
「で、藤堂くんも当然絵梨のことが好きだったんだ」
「うん」
当然ってのがひっかかるけど…。
「よかったわねぇ、絵梨は前から好きだ好きだって言ってたもんね」
へえ、そんなに絵梨は俺のことが好きだったんだ。
「でも、これで瞳とかに恨まれるかもよ。瞳はずっと藤堂くんの好きだって言って、藤堂くんと絵梨が話をしてるだけで、嫌味を言われてたもんね」
ええっ、あの瞳が俺のことを好き?
瞳というのは一見大人しそうな美人だ。
真治も嫌いじゃない。
どちらかと言うと好きな方だ。
その瞳が人に嫌味を言うなんて信じられない。

絵梨は二人で登校したことを男友達に冷やかされていた。
それでも絵梨は「俺は絵梨が好きだ。交際している」と大きな声で宣言するもんだから、瞳の怒りは頂点に達してしまった。

放課後、真治は瞳に呼び出された。
呼び出された体育館の裏に行くと、瞳とその友達たち5人が待っていた。
「絵梨、どういうこと?あれほど藤堂くんには手を出さないでって言ってたのに」
(美希の言ってたのはやっぱり本当だったんだ)
「私がどれだけ藤堂くんのことが好きなのかあなたには言ってきたでしょ?なのにあなたは幼馴染みというだけで私の藤堂くんをたぶらかして許さない」
そう言って瞳とその仲間たちは真治に掴みかかってきた。
いくら絵梨になっているからと言って、中身は真治だ。
軽くかわすと瞳の腕を捻り上げた。
「あんたたち、瞳の腕を折られたくなかったら、向こうに下がって」
真治は少し強く腕を捻った。
「お願い、みんな。向こうに行って」
「さて、瞳。もうわたしに関わらないって約束できる?」
「誰が!」
真治は腕をさらに強く捻った。
「痛い、痛い。分かったわよ」
「今のやりとりは全部録音してあるからね。下手な真似すると皆に今のやりとりを公開するよ。瞳のプライドはガタガタになるでしょうね。分かった?」
「わ、分かったわよ。覚えてらっしゃい」

真治は学校で起こったいろんな出来事のおかげで、生理のこともあまり気にせずに済んだ。
絵梨の生理痛は女性の中では軽い方だそうだ。
それが不幸中の幸いだった。

金曜になると生理が終わった。
真治はその夜、生理が終わったことを絵梨に告げた。
「そっか。せっかく真治としても馴染んできたのにちょっと残念ね」
「何言ってんだよ。俺は早く自分の身体に戻りたいんだからな」
「じゃあ、今からする?」
「今すると直之に声が聞こえるかもしれないから、この前みたいにデートしてからにしない?」
「真治がそう言うんなら、あたしはそれでいいよ。じゃっ、明日ね」
絵梨はさっさと窓を閉めて、カーテンも閉めてしまった。
「もう、あっさりしてるんだからぁ」
真治はもう少し話をしてからお休みを言ってほしかったのだ。
そういう欲求が女性っぽいということに真治は気づいていなかった。

土曜日、絵梨になった真治はタンクトップにミニスカートという自分でも思い切った格好をしてみた。
1週間、セーラー服で通ったのでスカートに対する違和感がなくなっていたのだ。
いや、抵抗感がなくなったレベルではなく、もう少し積極的にスカートが好きになっていた。
セーラー服より短い膝上15センチ程度はあろうかというミニのフレアスカートを穿いた。

「おはよう」
「おはよう。真治、どうしたのよ?そんな女の子っぽい格好して」
「どう、可愛い?」
「可愛いけど…」
真治は絵梨の股間が盛り上がっていることに気がついた。
「絵梨ったら元の自分に欲情してるんだ」
「真治がそんなスカート穿くからでしょ!?」
二人は前の週と同じホテルに行った。

ホテルの部屋に入ると絵梨はすぐに真治を抱きしめた。
「絵梨、どうしたんだよ?」
絵梨は何も言わずに唇を重ね、スカートの中に手を入れた。
中指でショーツの上から感じやすいところを擦った。
「絵梨、やめて…。恥ずかしい」
真治は立っているのがつらい状態だった。
絵梨の腕の力で何とか倒れずにいられた。
絵梨はしつこく股間を触った。
真治はショーツが自分の出している液で濡れてきたことを感じていた。
「絵梨、服を脱がせて」
真治と絵梨は自分で服を脱いで全裸になった。
「絵梨、早く来て」
十分感じている真治はすぐにでも絵梨が欲しかった。
「ちょっと待って」
絵梨は床に脱ぎ捨てたズボンのポケットから何かを取り出した。
「伊東くんにもらっの、これ」
絵梨はペニスにコンドームをつけた。
そうして、ペニスを真治の入り口にあてた。
「行くわよ」
「うん」
絵梨はペニスを真治の中に挿入した。
「ぅふん、気持ちいい……」
絵梨は身体を動かし始めた。スピードがあがった。
「真治、行くよ」
「ぁぁぁぁ、絵梨…来てぇぇぇ…」
真治は自分の中に入ったペニスがビクンビクンと動いたことが分かった。
精子を絞るべく自分がペニスを締め付けていることも感じた。
真治は自分の中に入っている力強い男性自身を感じていた。
幸せいっぱいの気分だった。
絵梨が自分の中から抜け出したとき「ぁふん…」と声を出してしまった。
(?)
快感を感じながらも、真治は期待していたことが起こっていないことを知った。
「どうして?どうして元に戻んないんだ?」
真治は少しパニックになった。
「落ち着いてよ、真治。理由は多分これだと思うわ」
絵梨は小さくなったペニスについたコンドームを指さした。
「どういうこと?」
「多分、二人が入れ替わるためには二人が交わって、真治の精液が絵梨の膣にあるいは子宮に放出されることが必要なんだと思ったの。それを確かめたくってコンドームをつけてやってみたの」
「じゃあ、何もつけないでやれば元に戻れるのか?」
「うん、多分」
「じゃ、何もつけないでもう一回やろうぜ」
「その前に真治に聞きたいんだけど、真治って男の子と女の子でどっちがいいの?」
「えぇっ!?どういうこと?」
「真治があたしになって、最初は嫌々っていうのがこっちから見てても分かったんだけど、だんだん女の子に馴染んできたよね。今日だって、短いスカート穿いてきたしさ。本当は女の子の方がいいんじゃないの?」
真治は言い当てられたようでドキッとした。
セックスの感じ方は断然女の子の方が良い。
母親にいろいろ言われたり、生理は鬱陶しいけど、服装や下着を楽しめたりできるのは、これまで経験したことがない楽しさがある。
真治はどういうふうに自分の気持ちを言っていいのか言いよどんでいた。
すると絵梨が言った。
「あたしは男の子の方がいいかなって思ってるの、実は」
真治は思いもしなかった言葉に驚いた。
「じゃあ、俺ももうちょっと絵梨でいてもいいぜ」
絵梨の言葉に便乗することにした。
「あたしでいたいならいたいって言えばいいのに、素直じゃないのね。じゃああと1ヶ月このままでいない?」
「うん、1ヶ月したら元に戻ることにしよっ」
「それじゃもう1回していい?」
絵梨は真治を押し倒した。
「男の子ってどうしてあんなにエッチばかりにこだわるのか分かんなかったけど、真治になってみて分かった。身体が求めるのよね、この1週間あたしのこと考えて毎晩のようにひとりエッチしたもの」
絵梨は真治の乳房を揉んだ。
「あたしの身体って本当に胸が弱いのよね」
真治は絵梨の愛撫に翻弄されていた。
(あぁ、やっぱり絵梨の身体は気持ちいい)
真治は乳房が伝わってくる快感に股間を濡らしていた。
絵梨は真治の乳房を揉みながら、股間にペニスを当て割れ目に沿って擦るように動かした。
真治はペニスを求めるように腰を浮かせた。
絵梨はコンドームをつけずに、生のままで挿入して、腰を動かした。
「ん…ん…、コンドーム…つけてないけど…いいの?」
「大丈夫、絶対に出さないから」
絵梨は射精のタイミングを自分でコントロールできるようになっていた。
しばらくの間、腰をぶつけていたが、真治が上り詰めそうになるタイミングが動きを止めた。
「ちょっと待って。コンドームつけるから」
絵梨は真治の身体から抜け出した。
昇りつめそうになっていた真治は途中でやめられたことが不満で元の自分を睨んでいた。
「お待たせ」
絵梨が再び入ってきた。
昇りつめそうになっていた真治はすぐに頂点に達した。
「あぁぁぁ、絵梨…。早く…来て…」
「真治、行くわよ」
絵梨はぶつけるようにペニスを押し込んで、動きを止めた。
その瞬間、コンドームの中に精液が飛び出した。
同時に真治も身体を仰け反らすようにして、頂点を迎えた。
絵梨の精液を最後まで吸い尽くすように、ペニスを締め付けた。
「あぁ、絵梨…。お前、すごかったぞ」
「真治だって喘ぎ声はあたしより絶対艶っぽかったよ」
「馬鹿っ……」
真治は女の子らしく恥じらいで顔を赤くした。

二人は1ヶ月の異性としての生活を楽しんだ。
真治になった絵梨は友達との猥談を楽しんだ。
女のときはどうして男ってあんなバカな話ばっかりするんだろうと思っていたが、男になってみると本当に頭はこんなことでいっぱいなのだ。
せめて話で発散しないといけないのかもしれない。
それに話すだけ話してそれで終わり!というのは女にない特性だ。
女だったらもっとネチッコイ。
男ってバカで単純と思っていたが、良い意味で当たっているんだと思う。

絵梨になった真治はファッションに目覚めた。
特にスカートが大好きだった。
男では絶対穿けないスカートファッションを楽しんだ。
一方では瞳を中心としたネチネチしたイジメとまでは言えないが、陰湿な嫌がらせも経験した。
女って可愛い顔してても信用できないなというのを肝に銘じた。

お互い交換した生活をそれなりに楽しんでいたが、やがて真治は2回目の生理を迎えた。
女の子初心者の真治とはいえ、2回目ともなると、始まる前に何となく気配を感じることができた。
なので、しっかりと事前準備をして落ち着いて対応することができたのだ。

生理が終わった日にすぐにセックスをすべく、二人はまたまたいつものラブホテルにやってきた。
熱い口づけを交わし、二人で一緒にベッドに倒れこんだ。
絵梨は口から耳、首筋、胸に舌を這わせた。
真治はくすぐったいような気持ち良さを感じていた。
胸から臍に、臍から内腿を舐められて、気持ち良さの中に少しの緊張を感じた。
ふいに両手で股を大きく広げられ、割れ目にそって舌を這わされた。
「いやっ……ダメ……そんなとこ…恥ずかしい……」
真治は逃げようと身をよじろうとした。
しかし男になった絵梨の力にかなうはずもなく、執拗なクンニを甘んじて受けるしかなかった。
「ぁあぁぁ……、恥ずかしい……、やめて……」
真治は羞恥と快感で気が狂いそうだった。
しかし、その部分から舌が離れたときもっとして欲しいという欲求は否定できなかった。
「じゃ、真治、入れるわよ」
絵梨は開脚した状態で脱力状態の真治の女性の部分にペニスをぶち込んだ。
「ぁあ…いい…」
絵梨はしばらくの間、腰を動かしていたが、やがて、抜け出ると、仰向けに寝転んだ。
「今度は真治が上になってくれない、あたしばかり動くの疲れたもん」
快感が続いてぼぅーっとなった頭の真治は、絵梨の腰の辺りを跨ぐように膝で立った。
そして絵梨のペニスに右手を添えて自分の膣口に当てて、ゆっくりと腰を落としていった。
「あ…ぁふん…何か…違う…」
「真治、腰を上下に動かして」
「ん…こう?……」
真治は腰を前後に動かした。
「そうじゃなくて上下に動かしてよ」
絵梨は真治の腰の辺りに手をやり、上下に動かすようにサポートした。
「ぁんっ…ぁんっ…ぁんっ…ぁんっ…ぁあ……」
真治はしばらくの間上下運動を続けた。
「真治、入れたまま、後ろ向いてくれる?」
「…こう…か……。ぅんっ…」
絵梨は上半身を起こし、背後から真治の乳房を揉んだ。
真治にとって、結合したままの乳房の愛撫は初めて経験だった。
「ゃんっ…ダメッ……変に…なっちゃう…」
真治は女言葉で喘いだ。
絵梨は右手を真治の股間に移動させた。
絵梨は腰を動かしながら、右手で真治のクリトリスに触れた。
「ぁぁぁああああ……。そんなとこ…やめて……」
真治は大きな声を出した。
もう何が何だか分からなかった。
息をするのも苦しいほどの快感だった。
真治は苦しさから逃れようと手をついて前方に行こうとした。
結合した状態を保つため、絵梨は膝で立つ姿勢になった。
この結果、真治は四つん這いで突かれる形になってしまった。
絵梨は相手の腰を持ち、叩きつけるように激しく腰をぶつけた。
「ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁんっ…ぁんっ…ぁんっ…ぁんっ…」
絵梨が真治のお尻に思いっきり腰をぶつけ動きを止めた。
その途端、ペニスから子宮の中に大量の精液が飛び出した。
二人の意識が真っ白になった。
二人は繋がったまま、眠ったように見えた。
数秒後、二人は元に戻ったことを確認した。
しかし、絵梨の身体にはまだ快感が残っているのだろう、眼が虚ろだった。
「まだ頭がぼぅーっとしてる。あたしの身体で真治ったらすごく感じたみたいね…」
ようやく二人とも落ち着いてきた。
真治は絵梨に聞いた。
「それにしても、絵梨、あんな技、どこで覚えたんだ?」
「…真治の部屋にあったDVDよ。よくあんな厭らしいDVD持ってるよね」
「それをお前は見たんだろ?」
「だって見つけたらどうしても見たくなって……」
「俺よりお前の方が絶対テクニック覚えたよな」
「真治もしっかり勉強してあたしを幸せにしてね」
そして真治は心の中で呟いた。
(セックスは絶対女の方がいいよな)
それは紛れもない真実だった。

二人は自由に自分たちでコントロール可能な性を入れ替える手段を手に入れた。
これからも二人が合意さえすれば性の間を行き来できるのだ。
こんな魅力的なパートナーが他にいるだろうか。

薬の使い方に間違いがあったのかもしれない。
でもそのおかげで、これからもずっと仲の良い幼馴染みでい続けることができるだろう。
二人の胸中に確信に近い形で、そんな思いが存在していた。





後日談



絵梨と真治は大学卒業後、同じ会社に就職した。
万一入れ替わっても何とか対応できるようにするためだった。
全く同じ部署の配属は叶わなかったが、同じ社内なら何となく様子が分かる。
定期的に入れ替わっていると、どちらの部署であっても、そつなくこなせるようになっていた。

そうして会社生活にも自信が出てきたころに真治は絵梨にプロポーズした。
「なあ、絵梨、そろそろ結婚しないか?」
「やっと真治もその気になったのね。もう言ってくれないかと思ってた。私はもちろんOKよ」
こうして二人は結婚することになった。

新婚初夜に二人は入れ替わってしまった。
「あーあ、これから新婚旅行に行くっていうのに、また真治になっちゃった」
「別にいいじゃない。ねっ、旦那様」
真治は絵梨の姿でいることが好きだった。
絵梨の姿になると何の抵抗感もなく女言葉を話せるのだった。
「まっ、いいか。また今夜入れ替わればいいもんね」
絵梨はこともなげに言った。

新婚旅行先で真治は絵梨として抱かれた。
新婚旅行という特別な雰囲気のせいかこれまで以上に感じることができた。
絵梨の腕の中で何度も絶頂に達した。
しかし、どういうわけか元に戻れなかった。

それから毎日のように抱かれた。
それでも決して戻ることがなかった。
その原因が分かったのはそれから2ヶ月経ったときだった。
絵梨の身体が妊娠したのだ。
ふたりとも薄々は感じていたことだった。
きっと妊娠しているときに入れ替わりが起こることに何らかの弊害があるのだろう。
そのために入れ替わりが起こらないんだろうと思っていたのだ。

「俺が子供を産むのか?」
薄々感じていたこととは言え、医者の口から懐妊を告げられた真治はかなりナーバスになっていた。
「仕方ないじゃない。あたしたちの子供なのよ」
「でもこんなとこから本当に子供が出てくるなんて信じられないよ」
「何、言ってるの?」
「だって俺のあんなチンポであんなに感じるんだぜ。子供の頭なんて出てきたら絶対裂けてしまうって」
「変な言い方しないでよ」
真治はその日から自分のお腹ばかりを触っていた。
完全なマタニティブルーだ。
「ね、そんなふうに塞ぎ込んでたら、絶対お腹の子に良い影響を与えないわ」
会社も休みがちになっていた。

「あ、動いた」
いつものようにお腹を触っていると、お腹の子供が動いたことを感じた。
「えっ?」
「あ、また…」
真治の目から涙が零れた。
「どうしたの?」
「生きてるんだ、お腹の赤ちゃんって…」
ついさっきまで表情が暗かった真治の顔が、イキイキと明るい表情になっていた。
「赤ちゃん、産むわ。わたしは母親なんだし、父親でもあるのね。もっとしっかりしなきゃ、ね」
いきなりの真治の変化に絵梨は驚いていた。
それでも何とか乗り越えられそうに感じ、ホッとしていた。

臨月に入ると、真治は大きなお腹を抱えて、子供の誕生を待っていた。
「妊娠が分かったときとえらい違いだな」
「だってずっと一緒だったのよ。早く赤ちゃんの顔が見たいな」
「絶対絵梨に似て可愛い赤ちゃんだよ」
「それって自画自賛じゃないの?」
真治はとにかく元気な子供であればそれでいいと思っていた。

予定日を1週間ほど過ぎたときに、陣痛を感じた。
その間隔が短くなるのを確認して、二人は病院に向かった。
真治はすぐに分娩室に入った。
「はい、呼吸をちゃんとして」
「いきんで。赤ちゃんが見えてきたわよ」
真治は死んでしまうのかと思った。
痛みで何度も意識を失いそうになった。
「オギャー」
生まれたばかりの子供の泣き声が分娩室に響いた。
臍の緒がついた状態で看護婦さんが真治に見せてくれた。
「可愛い女の子ですよ」
真治は肩で息をしながら子供の顔を見た。

「女の子でした」
「妻は?絵梨は?」
分娩室の外に絵梨の声が聞こえた。
「奥さんはお元気ですよ。安産でした」
(あれが安産?死にそうだったぞ)
真治はそんなことを考えながら眠ってしまった。

真治が病室に戻ると赤ん坊を抱いている絵梨がいた。
「ずるい。わたしが産んだのに先に抱いて」
「ははは、ご苦労さん」
そう言って真治に子どもを渡した。
「次はあたしが産むからね」
絵梨は小声で真治に言った。
「別に次も産んでもいいわよ。でももし次に妊娠するのがあなただったら、わたしのほうが先輩よ。だから何でも教えてあげるわ」

結局絵梨が子供を産むことができたのは4人目の子供のときだった。


《完》

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